2009 Fiscal Year Annual Research Report
メルケル細胞ポリオーマウイルスの感染病理に関する研究
Project/Area Number |
21590520
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 National Institute of Infectious Diseases, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Keywords | ポリオーマウイルス / メルケル細胞癌 / ウイルス発癌 / メルケル細胞ポリオーマウイルス / large T抗原 / カポジ肉腫 |
Research Abstract |
近年メルケル細胞癌から発見されたメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)につき、癌ウイルスとしての病原性を明らかにし、診断、治療に役立つ知見を得ることを目的に、メルケル細胞癌におけるMCPyV感染細胞の同定、MCPyVの感染疫学、感染実験系の確立、McPyVの形質転換能の解析等を行う。研究のゴールはMcPyVに関する病理診断、血清診断系を確立するとともに、MCPyVの感染メカニズムと発癌メカニズムを解明する点にある。本年度は臨床検体から得られた材料を用いて、抗体、各遺伝子の発現ベクターの構築など、MCPyV研究の基礎となるツールの開発を中心に行ない、次の2つの成果を得た。 1.日本のメルケル細胞癌の症例から、はじめてMCPyVを検出し、報告した。11例のメルケル細胞癌の症例のホルマリン固定パラフィン標本からDNAを抽出し、MCPyVの各遺伝子をncsted PCRで検索した結果、6例(55%)でMCPyVが陽性であった。この陽性率は欧米諸国の報告と比べると低い。細胞あたりのウイルスコピー数は0.04-0.43コピーであり、低いコピー数の症例も存在していた。同時に検索した、200を超える他の疾患の病理組織標本では、3例のカポジ肉腫症例からMcPyVが検出された。しかし、カポジ肉腫ではMCPyVのコピー数がきわめて低く、疾患との関連は薄いものと考えられた。 2.日本人由来のMCPyVのlarge T抗原をクローニングし、欠損変異体を作ることによって、large T抗原の核局在化シグナルを同定した。メルケル細胞癌ではこの核局在化シグナルの下流に停止コドンを伴った変異が入ることで発癌することが明らかとなり、日光露出部位におけるウイルス発癌の機構を明らかにした。
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[Journal Article] Nuclear localization of Merkel cell polyomavirus large T antigen in Merkel cell carcinoma2010
Author(s)
Nakamura T, Sato Y, Watanabe D, Ito H, Shimonohara N, Tsuji T, Nakajima N, Suzuki Y, Matsuo K, Nakagawa H, Sata T, Katano H.
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Journal Title
Virology 398
Pages: 273-279
Peer Reviewed
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