2009 Fiscal Year Annual Research Report
宿主防御因子APOBEC3の生化学的特性と抗レトロエレメント作用の機序の解明
Project/Area Number |
21590525
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Research Institution | Clinical research Center, Nagoya National Hospital. |
Principal Investigator |
岩谷 靖雅 Clinical research Center, Nagoya National Hospital., 感染免疫研究部, 室長 (90303403)
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Keywords | ウィルス / 生体分子 / 酵素 / 蛋白質 / 生体防御因子 |
Research Abstract |
HIVが属するレトロウイルスやレトロトランスポゾン(以下、まとめてレトロエレメント)の複製は、細胞内で発現している宿主防御因子APOBEC3ファミリー(ヒトではAとB、C、DE、F、G、Hの7種ある)によって抑制される。本研究は、APOBEC3によるレトロエレメントの複製の抑制メカニズムとその特異性を決定する要因を解明することを目的とし、レトロエレメントに対する生体防御機構を利用した感染症治療や病態解析やその応用に貢献できる基礎を築きたいと考えている。 当該年度には、2つの研究成果を得た。1つは、バキュロウイルスを用いたタンパク発現系を利用して、7種のAPOBEC3タンパクを発現・精製し、酵素活性を保持するタンパクとして調製することに成功した。APOBEC3の生体防御機構の分子生物学的な機序の解明に向け、次年度の研究計画(生化学的・酵素学的特性の決定)に繋げることができた。2つ目の成果は、「HIV-1がウイルスタンパクVifを介して、どのような仕組みでAPOBEC3Gの生体防御機構を解除するのか?」という答えの一端を、構造生物学的な解析によって明らかにした。VifタンパクがAPOBEC3Gに結合すると、ある構造学的な制約下で、一定の領域にユビキチン分子が付加される。そのため、APOBEC3Gが細胞内からユビキチン・プロテアソーム系を介して分解・除去されてしまうことを見出した。さらに、Vifに結合するが、ユビキチン化されない人工的なAPOBEC3G変異体が、野生型のHIV-1に対し強い感染抑制効果を示すことを見出した。これらの成果は、創薬開発やHIV感染症治療に応用できる可能性が高いと考えられる。
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Research Products
(7 results)