2011 Fiscal Year Annual Research Report
医師の処罰と関わる医療事故における法医学的検証システムの研究
Project/Area Number |
21590563
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
黒木 尚長 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (30225289)
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Keywords | 診療関連死 / 医療関連死 / 医療事故 / 法医学 / 刑事法学 / 異状死体 / 司法解剖 / 国際疾病分類 |
Research Abstract |
検証システムがまとまらない要因として診療関連死における異状死の範囲と医師の刑事罰の問題があると考え、国内事情を調査した。診療関連死がもたらす医師の刑事罰は、現状は抑制され激減している。一方、国内の診療関連死の実数を死亡診断書(死体検案書)の死因をもとに、ICD-10でコードされる死因統計から該当数を抽出したところ、Y40-Y84,Y88に該当する死亡例が、全国では、2000年の331例から2010年の819例と10年で2.5倍に増加していた。死亡者数が全国の6.4%を占める大阪府では、2000年は33例、2010年は58例であった。次に、大阪における診療関連死の剖検例をデータベース化したところ、実際にモデル事業での解剖もしくは、司法解剖が行われた事例は極めて少なく、非解剖例が大半であることが判明した。また、警察官の検視で刑事罰の可能性が少なくないと判断された診療関連死については、ほとんどが司法解剖となっていた。司法解剖は1名の法医学者による鑑定であり、医療過誤の程度まで判断するのは難しい。加えて鑑定書が原則非開示であり、多くの問題を孕み適切でないことが多くの事例で明らかになった。特に医療機関が考えている死因と、鑑定人が決定した死因が異なり、医療過誤であることが判明したときなどでは大問題になりやすい。一方、非解剖例である診療関連死が現実に多く存在しており、その事実が後日明らかになると、医事紛争、場合によっては、医療従事者の刑事罰の可能性が高まる。 法医解剖により解剖率を高め、すべてを法医解剖で扱おうとする動きもあるが、基本的には、すべての診療関連死が司法解剖になることなく、現在のモデル事業に近いシステムですべての診療関連死の死因を解明することが最良の理想的なシステムである。しかしながら、人的問題、経済的問題も大きく、現状でそのシステムが動くためには難題が山積している。
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