2009 Fiscal Year Annual Research Report
新型インフルエンザ・パンデミックにおける「往診システム」の検証
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21590574
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
三谷 智子 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 助教 (30378757)
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Keywords | 危機管理 / 社会医学 / 感染症 / パンデミック / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
平成22年度は、「新型インフルエンザ対応に関する病院勤務者の態度を決める心理社会的要因について」の調査をまとめ、学会に発表を行った。 【背景】2009年春以降、世界中で豚由来インフルエンザウィルス(S-OIV)によるA/H1N1の流行があり、WHOのフェーズ6が発令された。H5N1によるパンデミックでは、H1N1以上に医療の需要が増し、医療現場の混乱が予想される。 【目的】本研究の目的はH5N1パンデミックの時に、医療従事者をいかに確保するかについて明らかにすることであった。 【方法】2008年8~12月、京都、大阪、兵庫の5つの私立病院と1つの公立病院のすべての職種の病院勤務者(医師、看護師、薬剤師、作業療法士、理学療法士、臨床検査技師、事務員など)への悉皆調査をおこなった。 【結果】3,152名中1,975名から回答を得た(62.7%)。204名(10.6%)は「病院には来ない」、363名(18.8%)は「いつもどおり出勤する」を選択し、504名(26.1%)は「病院には来るが、インフルエンザ患者の対応はしない」、857名(44.5%)は「条件が整えば業務を行う」と回答した。条件ではPPEの支給(80%)休業補償(69.3%)が挙げられた。また新型インフルエンザに対する「感情」面に関する回答から因子分析を行い、病院従事者には新型インフルエンザに対して「怒り」「不安」「恐怖」「傍観」の4つの因子が抽出された。パンデミックに対する態度別にこれらの因子得点を分散分析で比較したところ、「いつもどおり出勤する」と回答した群が有意に不安と恐怖の得点が高く、「病院には来るがインフルエンザ患者対応はしない」群が有意に怒り得点が高かった。 【考察】 不安や恐怖を感じながら約20%の病院勤務者が通常通り病院に来ると回答する一方で、約45%の人は冷静に条件の整備されるのを望んでおり、25%の人が怒りを感じながら「病院には来るがインフルエンザ患者の対応はしない」と回答していた。パンデミック対応については、事前に病院勤務者の勤務条件の整備といった具体的な準備が望まれる。
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