2009 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA解析による抗癌剤耐性白血病の分子機構の解明:検査診断への応用
Project/Area Number |
21590640
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮地 勇人 Tokai University, 医学部, 教授 (20174196)
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Keywords | 白血病細胞 / 抗癌剤耐性 / マイクロRNA / FLT3-ITD / Ara-C |
Research Abstract |
本研究では、白血病細胞において、耐性遺伝子の発現異常に調節因子としてマイクロRNAの発現異常の意義を明らかとし、これら非翻訳領域から転写されるRNA情報と耐性遺伝子の発現(翻訳領域のRNA情報)からなる真のトランスクリプトーム解析に基づく耐性診断の検出標的として評価を行い、遺伝子発現解析による抗癌剤選択ための薬剤耐性の遺伝子検査の開発および臨床応用を試みることを目的とした。まず、急性骨髄性白血病の抗癌剤治療の抵抗性の分子機構を解明するため、予後不良因子として知られるFLT3-ITDを株化培養ヒト骨髄性白血病K562細胞およびマウス株化骨髄性細胞HF-6に導入し、MTTアッセイにて抗癌剤感受性を評価した。その結果、治療のkey drugであるarac-Cに耐性を示すことが明らかとなった。その機構として、ara-Cの細胞膜輸送を担うequilibrative nucleoside transporter 1(ENT1)発現の減少がリアルタイムPCR法で明らかとなった。これに加え、ウエスタンブロット解析で蛋白発現低下が確認された。ENT1減少によるAra-Cの細胞内取り込み低下がArc-C耐性の分子機構となることが示唆された。FLT-3阻害剤の前投与にて、ara-C耐性、ENT発現低下が解除された。さらに、ENT発現低下に介在する転写因子として、hypoxia inducible factor 1, alpha subunit(HIF1A)に着目し、luciferase assayを用いたENT1 promoter活性誘導(抑制)でその調節が明らかとなった。以上、白血病細胞の増殖因子としてFLT3-ITD陽性の骨髄性白血病における治療抵抗性の分子機構として、細胞薬理学的な機構を介して、治療のkey drugのara-Cに耐性化することが明らかとなった。本研究成果は、白血病発症に関わる自然耐性機構における特定薬剤耐性の分子機構として初めての治験であり、本研究の知見と実験システムは、白血病の耐性細胞の分子診断と耐性克服の方法の開発に有用なモデルとなると考えられた。この株化培養耐性白血病細胞をモデルとして用いて、耐性機構における遺伝子発現異常とマイクロRNA発現の関係を調べる予定である。
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