2010 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA解析による抗癌剤耐性白血病の分子機構の解明:検査診断への応用
Project/Area Number |
21590640
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮地 勇人 東海大学, 医学部, 教授 (20174196)
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Keywords | 白血病 / 抗癌剤耐 / マイクロRNA / FLT-3-I / Ara-C |
Research Abstract |
本研究では、白血病細胞において、耐性遺伝子の発現異常に調節因子としてマイクロRNAの発現異常の意義を明らかとし、これら非翻訳領域から転写されるRNA情報と耐性遺伝子の発現(翻訳領域のRNA情報)からなる真のトランスクリプトーム解析に基づく耐性診断の検出標的として評価を行い、遺伝子発現解析による抗癌剤選択ための薬剤耐性の遺伝子検査の開発および臨床応用を試みることを目的とした。これまでの研究において、予後不良因子として知られるFLT3-ITD導入株化培養骨髄性白血病細胞を用いて急性骨髄性白血病の抗癌剤治療の抵抗性の分子機構の解明を行ってきた。まず、株化培養骨髄性白血病細胞K562およびマウス株化骨髄性細胞HF-6にFLT3-ITDを導入し、MTTアッセイにて抗癌剤感受性を評価し結果、治療のkey drugであるarac-Cに耐性を示すことが明らかとなった。その機構として、ara-Cの細胞膜輸送を担うequilibrative nucleoside transporter 1(ENT1)発現の減少、ENT1減少によるAra-Cの細胞内取り込み低下がAra-C耐性の分子機構となること、FLT-3阻害剤の前投与にて、ara-C耐性、ENT発現低下が解除されること、さらに、ENT発現低下に介在する転写因子として、hypoxia inducible factor 1発現上昇が明らかとなった。今年度は、AML患者細胞が有する2種類のFLT3変異遺伝子(FLT-ITD-1、-2)をTAクローニングにてレトロウイルスベクターを作製し、株化培養骨髄性白血病細胞K562、HL60に導入した。導入したFLT3-ITDの発現はRT-PCRおよびWestern blotにて確認した。これら細胞における遺伝子発現の制御機構を知るため、マイクロアレイ法を用いてmiRNA発現を調べた。hsa-miR-20bの発現が亢進し、hsa-miR-155, hsa-miR-1093、hsa-miR-1249, hsa-miR-1281, hsa-miR1290, hsa-miR-1973の発現が低下していた。 Hsa-miR-20bはSTAT3とHIF1αを標的とすること、hsa-miR-155発現がFLT-3ITD陽性の急性骨髄性白血病細胞で変化するとの既報の知見から、これらmiRNA発現がAra-C耐性の分子機構に重要な調節因子として機能している可能性がある。以上は、白血病発症に関わる自然耐性機構における特定薬剤耐性の分子機構として初めての治験であり、本研究の知見と実験システムは、白血病の耐性細胞の分子診断と耐性克服の方法の開発に有用なモデルとなると考えられた。
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