2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA解析による抗癌剤耐性白血病の分子機構の解明:検査診断への応用
Project/Area Number |
21590640
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮地 勇人 東海大学, 医学部, 教授 (20174196)
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Keywords | 白血病 / 抗がん剤 / マイクロRNA / FLT-3 / Ara-C |
Research Abstract |
本研究では、白血病細胞において、耐性遺伝子の発現異常に調節因子としてマイクロRNAの発現異常の意義を明らかとし、これら非翻訳領域から転写されるRNA情報と耐性遺伝子の発現(翻訳領域のRNA情報)からなる真のトランスクリプトーム解析に基づく耐性診断の検出標的として評価を行い、遺伝子発現解析による抗がん剤選択ための薬剤耐性の遺伝子検査の開発および臨床応用を試みることを目的とした。これまでの研究において、急性骨髄性白血病(AML)の重要な予後不良因子であるFLT3-ITD導入株化培養骨髄性白血病細胞を用いて抗がん剤治療抵抗性の分子機構の解明を行ってきた。まず、株化培養骨髄性白血病細胞K562およびマウス株化骨髄性細胞HF-6にFLT3-ITDを導入し、MTTアッセイにて抗がん剤感受性を評価した結果、治療のkeydrugであるArac-Cに耐性を示すことが明らかとなった。その機構として、ENT1発現の低下によるAra-Cの細胞内取り込み低下が明らかになり、さらに、ENT発現低下に介在する転写因子として、hypoxia inducible factor 1(HIF1α)発現上昇が明らかとなった。AML患者細胞が有する2種類のFLT3変異遺伝子(FLT-ITD-1、2)をレトロウイルスベクターにて、K562細胞、HL60細胞に導入し、マイクロアレイ法を用いてmiRNA発現を調べた結果、STAT3とHIF1αを標的とするHSa-miR-20b発現の亢進、FLT3-ITD陽性のAML細胞での発現変化が知られるhsa-miR-155発現の低下が確認できた。本年度は、治療後白血病細胞は、骨髄中で低酸素状況のniche環境で残存し再発の原因となることに着目し、FLT3-ITDを導入した細胞について低酸素下での細胞増殖への影響を調べた。その結果、FLT3-ITD陽性でHIF1α発現上昇の認められた細胞は、コントロール細胞と異なり、5%の低酸素下でも通常の20%と同様に増殖できた。治療抵抗性の白血病幹細胞は、正常造血幹細胞と同様に低酸素状態の骨髄腔内のniche環境にあってその細胞増殖は抑えられているが、FLT3-ITDが増殖を下支えしている可能性がある。本研究の知見と実験システムは、白血病の耐性細胞の分子診断と耐性克服の方法の開発に有用なモデルとなると考えられた。
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Research Products
(4 results)