2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会経済的要因による健康格差および医療格差に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21590656
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
福田 吉治 山口大学, 医学部, 教授 (60252029)
|
Keywords | 健康格差 / 社会疫学 / 健康の社会的決定要因 / 医療格差 / 社会格差 |
Research Abstract |
健康格差をもたらす地域の社会環境要因と個人の社会経済要因の関連の分析として、国民生活基礎調査(昭和61~平成19年)と国民健康・栄養調査(平成15~19年)のマクロデータ(個票)を用いて分析を行った。その結果、低所得者ほど、多くの身体的自覚症状およびそれらに伴う受診割合が高いことがわかった。所得と医療受診の関係では、高齢者では、低所得による受診抑制はないが、若年では傷病によっては受診抑制があることが示唆された。家計支出と循環器疾患のリスクファクターならびに栄養摂取との関連を分析した。その結果、女性では、家計支出が低いほど、肥満、高血圧、糖代謝異常、喫煙などの循環器リスクが高いことがわかった。しかし、これらの関係は男性では明確ではなかった。家計支出と栄養摂取域との関係では、家計支出が高いほど、多くの栄養素での摂取量が高く、栄養摂取基準を満たしている者の割合が高かった。 独自の調査として、前2年間で実施した調査に加えて山口県に居住する150名に郵送質問紙調査を行い、76名より回答があった。3年間のデータをプールして分析した結果、個人所得、世帯所得、主観的経済状態、幼少時の経済状態などが、自覚的健康度、うつ・不安状態、うつ治療等の健康状態と関係していることがわかった。特に、主観的経済状態は他の指標に比較して強い関係が認めれた。また、一般住民の健康格差の意識として、所得が高い方が健康問題を持つ者の割合が総じて少ないと思っている者が多かった。これらの認識は実態とは異なっており、今後、健康格差を是正するには、こうした一般住民の意識を変えていく必要性も示唆された。
|