2011 Fiscal Year Annual Research Report
経気道曝露法による工業用ナノ粒子の標的臓器の検索と有害性評価
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21590674
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
大藪 貴子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (20320369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明星 敏彦 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00209959)
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Keywords | 二酸化チタンナノ粒子 / 有害性評価 / 気管内注入試験 / 体内動態 / 排泄速度 |
Research Abstract |
これまでの2年間の研究期間では、ルチル型結晶構造の二酸化チタン原粉からナノサイズの粒子を作製し、ラットの気管内に0.2mg、0.5mgの投与量で注入を行い、注入後、3日後、1、3、6、12ヶ月後に、肺、肝臓、腎臓、脾臓、血液および気管支肺胞洗浄液を採取した。二酸化チタンナノ粒子の体内動態を明らかにするために、臓器中の二酸化チタン量を定量する方法を確立し、その方法で、ラット肺内の二酸化チタン量を定量し、肺からの排泄速度を求めた。その結果、0.2mg注入群では、半減期3.4ヶ月、0.5mgでは3.9ヶ月で肺から順調にクリアランスされていることが確認された。 本年度は、注入後3日後、6ヶ月後、12ヶ月後の血液、肝臓、腎臓、脾臓のチタン量の定量、および肺の病理組織学的検討を行った。血液、各臓器におけるチタン量を定量した結果、いずれの解剖時期のいずれの検体においてもチタン量はほぼ定量下限に近い値であった。また、各解剖時期における気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、好中球数は、正常ラットとほぼ差異はなかった。 病理組織学評価では、各解剖時期における0.5mg注入ラットの肺から、病理組織切片を作製した。組織観察の結果、肺胞内に粒子を貪食したマクロファージが出現し、その出現頻度は全期間を通じてごく軽度ないし軽度であり、その集族はほとんど認められなかった。また、間質の炎症細胞浸潤もごく軽度であった。傍気管支リンパ装置にも粒子を貪食したマクロファージがごく少量観察されたが、線維化や細気管支ないし肺胞上皮の増殖性変化は、全観察期間を通じて認められなかった。 これら結果より、注入したルチル型二酸化チタンナノ粒子の肺における炎症惹起作用は非常に軽度であり、3~4ヶ月の半減期で肺から順調に排泄されることがわかった。また、血液や他の臓器におけるチタンがほとんど検出されないことから、他臓器へもほとんど移行せず影響も及ぼさないのではないかと考えられた。
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