2009 Fiscal Year Annual Research Report
低まん延下における結核の保健医療システムに構築に関する研究
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21590692
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高鳥毛 敏雄 Osaka University, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20206775)
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Keywords | 結核患者 / 保健医療システム / 保健所 / 低まん延 / 受診の遅れ / 診断の遅れ / 結核医療 / ハイリスク者 |
Research Abstract |
【目的】結核患者の受療過程を分析することにより結核の患者発見、受診及び診断などの保健医療にかかわる現在の実態を調査し低まん延状況に向かいつつあるわが国の結核の保健医療システムのあり方を示すことを目的として行った。【方法】大阪府の北摂の5保健所の平成20年登録喀痰塗抹陽性患者163例(男性111例、女性52例)を対象として、結核治療成績評価票に記載されている情報を職員による転記により情報を収集した。調査した内容は、患者の氏名、生年月日、登録番号を除いた、患者の症状出現時期、受診に至る過程、初診から診断に至る過程に関する結核患者の発症から診断、登録に至る実態に関するものである。低まん延下では患者の偏在が課題となることから結核ハイリスク者の多い大阪市西成区あいりん地区における結核の保健医療システム構築に関わる実態についても調査を行った。【結果と考察】年齢階層別には65歳未満において、社会経済的には健康保険の未加入者や生活保護者は受診の遅れが生じていた。定期健診、接触者健診による発見率は40~50歳代の働き盛りの年齢階層の者に高かった。結核の治療歴ありの者に診断の遅れがみられた。結核の発症から結核の診断に至るまでの受療過程では、初診としては診療所が大きな役割を果たしていたが、確定診断については市民病院など地域の中核病院が大きな役割を果たしていた。現状では中核病院が初期診療から専門病院へとつなぐ要となって現在の結核医療体制が構築されている実態が明らかとなった。患者発見の遅れについては、受診の遅れの生じやすいハイリスクの人々が存在しており、低まん延状況下においてはハイリスク者に対する対策の強化が課題であると示唆された。特に結核ハイリスク者の多い地域においては、患者発見と相談・診断・治療および患者の治療支援を行える保健医療制度の構築が検討課題と考えられた。
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Research Products
(6 results)