2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中予防のための新たな指標である微小脳出血の検討
Project/Area Number |
21590697
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊賀瀬 道也 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90314955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 哲郎 愛媛大学, プロテオ医学研究センター, 教授 (00174003)
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Keywords | 微小脳出血 / 側頭葉内側部萎縮 / 開眼片足立ち / 軽度認知機能低下 / 脳室周囲病変 |
Research Abstract |
高齢者のQOL改善のための大きな要素は「寝たきり防止」である。高齢者において脳卒中は寝たきりの原因の第1位であり脳卒中予防は重要な課題である。頭部MRI検査では無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)のみならず、近年では無症候性微小脳出血(かくれ脳出血、cerebral micro bleed=CMB)の描出も可能になった。平成21年度の研究では継続的にさらなるサンプル収集を行い、解析規模を拡大させた。そのうえで開眼片足立ち時間と脳萎縮・認知機能の関連について検討した。開眼片足立ち検査は体のバランスの指標であり臨床でも簡便に行える検査であり、一方脳萎縮に関してはTHA(Temporal horn of lateral)は側頭葉内側部萎縮の指標であることが報告されている(Hattori M, et al.2007)。今回の検討ではCMBと脳萎縮には相関がなかったが、無症候性脳血管障害と脳萎縮には相関があり、脳室周囲病変(PVH)とTHAとの関係を検討したところ、PVHがわずかでも存在する(PVHグレード1以上)と、THAは有意に拡大していた。THAの拡大でみた脳萎縮の程度と、開眼片足立ち時間の関連を片足立ち時間の四分位で検討したところ、開眼片足立ち40秒未満のグループでは有意にTHAが拡大していた。THAに影響を与える各種交絡因子を補正して検討したところ、年齢、身長、降圧薬の服用、PVH≧1などの交絡因子を補正した後でも重心動揺とともに開眼片足立ち40秒未満はTHAと有意な相関を示した。立位での動揺性の増加が、脳の器質的障害を示すTHAと有意に相関したことから、次に脳の機能的障害である認知機能の低下と片足立ち時間との相関について検討した。その結果、MCI(軽度認知機能低下)群では健常群に比して有意な片足立ち時間の低下をみとめ、さらに外来通院中のアルツハイマー病患者では著しい片足立ち時間の短縮を認めた。このことから高齢者の立位動揺性の低下は脳萎縮を介して認知機能と相関する可能性が考えられた。開眼片足立ち検査は簡便な脳萎縮や認知機能低下の評価指標になる可能性が示唆された。したがって開眼片足立ちは、筋・骨格系、神経系、感覚系(特に体性感覚)の、加齢による低下の総合的な評価指標である可能性が考えられた。
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