Research Abstract |
平成22年に申請者の研究室で施行された剖検は222例で,うち30例の突然死例が認められた。222例中,135例が検索条件に一致し,病理組織標本の作製を行った。本報告書提出時点で,60例においては免疫染色を施行した。結果として,生前パーキンソン病と診断されていた4例においては心刺激伝導系近傍の自律神経節,繊維にα-synucleinの沈着が確認され,うち2例は心臓性突然死と考えられた。また,生前の病歴が不明な突然死例において,延髄,心刺激伝導系近傍ないし,上頚神経節にα-synucleinの沈着を認める例を7例確認した。さらに非突然死剖検例の検索過程において,脳幹,心臓周囲自律神経に様々な程度のα-synucleinの沈着を伴う例が認められる一方で,脳幹に明らかな沈着を確認できなかったにも関わらず,自律神経系ではα-synucleinの沈着を認める例を確認した。以上のことからパーキンソン病の発症が認められる前に,自律神経系に高度にα-synucleinの沈着が進む症例が存在し,このような例の一部において,心機能,特に自律神経機能を脆弱化させる場合がある可能性が示唆され,心臓の器質的疾患と相乗したり,過度のストレスがかかることによって,不整脈を介した突然死の危険性が高まる可能性があることが示唆され,現時点で,α-synucleopathyの循環器系に対する意義の検証は有意義であると考えられた。今後更に症例数を重ね,3年間の検索結果を総括し,その意義について検証する予定である。
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