Research Abstract |
野生型マウスを用いて下大静脈結紮による深部静脈血栓塞栓症(DVT)モデル作成し,血栓形成後に採取した下大静脈のパラフィン包埋切片について,各種病理組織学的染色を行い,血栓の陳旧度に伴う組織学的変化を明らかにした.まずmatrix metalloproteinases(MMP)-2, MMP-9,それぞれに対する特異的抗体を用いた免疫染色を行い,各分子の局在を検索するとともに,画像解析を行い,各分子についての半定量的評価を行った.その結果,MMP-9/MMP-2比が2.0以上では5日以内,2.0未満では7日以上経過した血栓であると推定できることが示唆され,剖検例においても血栓の陳旧度判定の有用な指標となると考えられた.また前年度の研究結果より,下大静脈内の血栓の大きさや溶解速度には,IFN-γが影響を及ぼしていることが推測された.そこでIFN-γ遺伝子欠損(IFN-γ〓)マウスを用いて,DVTモデルを作成した.IFN-γ〓マウスの血栓は,野生型マウスと比較すると有意に小さく,溶解速度も速かった.血栓が形成された下大静脈の血流をレーザー血流計により測定したところ,IFN-γ〓マウスでは,野生型マウスと比較すると,血流量が多く,また血流量の回復も早いことが分かった.さらに野生型マウスにIFN-γ中和抗体を投与したところ,血栓の大きさや血流量等についてIFN-γ〓マウスと同様の傾向が認められた.そしてサイトカイン・ケモカインの遺伝子・タンパク質発現レベル,組織学的検討等を行った結果,IFN-γ/Stat-1シグナル伝達経路が,血栓溶解に必要なMMP-9の発現や,血栓内の血管新生に必要なVEGF産生を阻害していることが明らかとなった.今後さらなる血栓陳旧度の指標を検索するとともに,それらの法医実務への応用の可能性を検討する予定である.
|