2011 Fiscal Year Annual Research Report
深部静脈血栓塞栓症の分子病理学的研究の確立とその法医学への応用
Project/Area Number |
21590741
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
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Keywords | 深部静脈血栓塞栓症 / uPA / tPA / PAI-1 / TNF-α / TNF-Rp55 / MMP-2 / MMP-9 |
Research Abstract |
野生型マウスを用いて下大静脈結紮による深部静脈血栓塞栓症(DVT)モデル作成し,血栓形成後に採取した下大静脈のパラフィン包埋切片について,各種病理組織学的染色を行い,血栓の陳旧度に伴う組織学的変化を明らかにし,血栓の陳旧度判定に有用な指標を検索した.そのために血栓の凝固・線溶系に関わるuPA,tPA及びPAI-1の動態を免疫組織化学的に検討した.それぞれの陽性細胞数の比を求めたところ,uPA/PAI-1は7日目までは0.15未満,10日以降で0.15以上をuPA/PAI-1は7日目までは0.2未満,10日以降で0.2以上を示した.これらの結果は,血栓内における新生血管やmyofibroblastの出現とも相関しており,血栓の陳旧度判定に有用な指標となり得ると考えられた.また前年度までの研究結果より,下大静脈内の血栓の大きさや溶解速度には,TNF-α-TNF-Rp55 axisが影響を及ぼしていることが推測された.そこでTNF-Rp55遺伝子欠損(Tnfrp55^<-/->)マウスを用いて,DVTモデルを作成した.まずTnfrp55^<-/->マウスでは,野生型マウスと比較して血栓の溶解が遅延することが分かった.そこで両マウスの血栓中のMMP-9の遺伝子発現を調べたところ,Tnfrp55^<-/->マウスでは野生型マウスより低値を示した.さらに両者の腹腔内マクロファージをTNF-αで刺激してMMP-9遺伝子発現を調べたところ,Tnfrp55^<-/->マウスでは変化が認められなかったが,野生型マウスではTNF-αの刺激によって増加した.また野生型マウスにTNF-αを投与したところ血栓溶解が促進され,TNF-α中和抗体を投与すると血栓溶解が遅延することが分かった.本研究結果よりTNF-α-TNF-Rp55 axisの血栓溶解への役割の解明は,深部静脈血栓症の予防や治療方法の開発にも重要であると考えられた.
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