2010 Fiscal Year Annual Research Report
腸管免疫系でのヘルパーT細胞分化制御を介した葛根湯の末梢性免疫寛容誘導作用の検討
Project/Area Number |
21590760
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
門脇 真 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20305709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
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Keywords | 葛根湯 / 食物アレルギー / 腸管粘膜免疫系 / 制御性T細胞 / 活性化T細胞 / 末梢性免疫寛容 / CD25 / Foxp3 |
Research Abstract |
これまでに、既存の抗アレルギー薬が有効性を示さない食物アレルギー病態モデルに対する葛根湯の薬理効果を報告してきた。この葛根湯の免疫薬理学的作用機序は、主に、腸管粘膜免疫系での粘膜型マスト細胞に対する抑制作用や腸管粘膜免疫系での免疫応答バランスの調節作用などが考えられる。本研究は、葛根湯の末梢性免疫寛容誘導作用を介した免疫応答バランスの調節作用を明らかにすることを目的にしている。 【方法】食物アレルギー病態モデルマウスの結腸全組織、粘膜固有層単核細胞(LPMC)及びLPMCから分離した各種免疫細胞でのサイトカイン等の発現量変化の検討、また、各種抗体を用いた免疫組織化学的検討及びフローサイトメーターによる免疫細胞の発現変動の検討を行った。 【結果】本病態モデルマウスの結腸においてCD4^+細胞の増多が観察されたが、葛根湯の投与は明らかな影響を与えなかった。本病態モデルで過剰に活性化されたCD4^+T細胞の割合は、葛根湯投与により約1/2倍に減少した。また、腸管粘膜中のCD3^+CD^4+FR4^+Foxp3^+細胞(制御性T細胞)の割合は、葛根湯投与により約2倍に増加し、CD4^+T細胞中のFoxp3 mRNA発現量も増加していた。そこで、多くの制御性T細胞に発現するCD25抗原に対する中和抗体を投与したところ、これまでと同程度にアレルギー性症状が観察された。しかも、抗CD25中和抗体を投与したにもかかわらず、葛根湯のアレルギー性症状抑制作用は影響を受けなかった。そこで、抗CD25中和抗体投与マウスで葛根湯によるLPMC中のCD3^+CD4^+FR4^+Foxp3^+細胞の変動を検討した。葛根湯投与群における抗CD25中和抗体投与による脾臓および腸間膜リンパ節でのCD4^+リンパ球中のCD25細胞は減少したが、LPMC中のCD3^+CD4^+FR4^+Foxp3^+細胞は増加していることが明らかになった。 【考察】葛根湯は、本病態モデルにおいて結腸のCD25ネガティブなCD3^+CD4^+FR4^+Foxp3^+制御性T細胞を増加させることにより、ヘルパーT細胞のTh1とTh2への分化、さらに活性化を抑制することで治療効果を示すことが示唆された。本研究により、葛根湯の免疫系に対する新しい機能が明らかにされ、臨床での新たな適応への科学的根拠を示したものと考えられる。
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