2011 Fiscal Year Annual Research Report
DNA二重鎖傷害早期応答因子に着目した肝癌リスク予測マーカーの開発
Project/Area Number |
21590835
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
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Keywords | 肝癌 / DNA二重鎖傷害 |
Research Abstract |
【目的】DNA二重鎖は、紫外線や化学物質などで傷害を受けて自己修復を行う。しかしながら、傷害の程度が強く、かつ持続する場合は癌化に寄与することは広く知られている。本研究では、DNA傷害の早期に応答するマーカー因子であるγ-H2AXの肝発癌初期過程における役割に着目し、様々な動物の肝発癌モデルやヒト肝癌組織におけるγ-H2AXシグナルを解析することによって、精度の高い肝癌予測マーカーの開発を目的とするものである。 【方法】2種類のマウス肝癌モデル((1)HBV X遺伝子トランスジェニックマウス、(2)ジエチルニトロサミン誘発肝癌モデル)を作成した。両モデルの発癌時期おける肝組織を経時的に採取し、発癌前後のDNA修復因子(ATM/ATAR,53BP,Chk1/2,ERCC1,TFIIH,XPG等)を解析した。さらに動物実験で得られた解析結果が、ヒト肝がん患者においても有用な発癌予測マーカーとして有用化を検討した。 【成績】両動物モデル共に、発癌の数ヶ月前からH2AXが強くリン酸化して活性化していることをWestern blot・免疫染織で見いだした。さらにHBV X遺伝子トランスジェニックマウスは、ATRが強く活性化するにも関わらず、その下流シグナルChk1/Chk2の活性化は阻害されていた。この理由として、発癌過程においては、Wip1が活性化するために正常なDNA修復が行えないためである可能性が示唆された。またヒト肝硬変組織ではγ-H2AXが著明に活性化しており、発癌した患者の多くはWip1の活性が高くDNA修復シグナルが抑制される傾向にあることを見いだした。すなわち、DNA傷害は、肝がんの発癌時期のかなり前から惹起されており、Wip1が発癌リスクを促進することが明らかになった。 【今後の展望】本解析の結果、DNA修復因子の候補を絞れば、癌予測に有用であることが明らかになった。将来的には、DNA修復マーカーを指標にした発癌予防方法の開発を行いたいと考える。
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