Research Abstract |
Polyhydroxybutyrate(PHB)の急性膵炎モデルにおける重症化防止メカニズムの有無を腸管内外環境の変化を中心に解析した.Wistar系雄性ラットに5%PHBを2週間自由摂取させて対照群と比較した(n=5).検討項目は,腹腔内臓器湿重量,糞便中のH_2O,NH_3,コハク酸,乳酸,ギ酸,酢酸,イソ酪酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,イソ吉草酸,腸管内容物重量,盲腸内pHとした.5%PHB自由摂取下のWistar系雄性ラットに4.5g/kg体重の滅菌1-アルギニン-塩酸塩を腹腔内投与して急性膵炎を作成した.0, 0.25, 0.5, 1, 3日における解析を行った(各n=8).検討項目は,腹水量,腹水中/血中エンドトキシン,血中IL-1β,IL-6,TNFα,腹水/腸間膜リンパ節細菌培養とした.併せて,盲腸内容物の腸内フローラの遺伝子解析(T-RFLP法)を行った.糞便中H_2O,NH_3の減少,盲腸内pH上昇,胃滞留内容物の減少,臓器湿重量減少(小腸,腎臓)において有意差(p<0.05)がみられた.糞便中有機酸組成には変動は与えなかった.膵炎誘発6時間後の腹水量はPHB投与群で有意な低値をとった.また,血中エンドトキシンは12時間後までは有意差はないが,PHB投与群で1日目に有意な低値をとった.加えて腸間膜リンパ節の感染が有意に低率であった.T-RFLP法では,PHB投与により主にクロストリジウム属の減少がみられた.PHBは糞便中有機酸組成に変動を与えることなく腸内細菌叢に影響を及ぼし,腸管内容物の滞留が減少し,腸管環境に影響することが示唆された.その結果,急性膵炎モデルにおけるbacterial translocationに対しては防御的に作用した.CVC挿入下の急性膵炎モデルにおける生存分析において,PHBの致命率低減効果が示された.
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