2009 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール性膵炎発症における自然免疫の関与と喫煙の影響の解明
Project/Area Number |
21590878
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
西尾 彰功 Kansai Medical University, 医学部, 准教授 (50362463)
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Keywords | 慢性膵炎 / アルコール / エンドトキシン / 自然免疫 / toll-like / receptor / サイトカイン |
Research Abstract |
慢性膵炎は、急性膵炎様の発作を繰り返しながら膵組織の破壊・脱落が非可逆性に進行する疾患で、その成因としてアルコール性が半数以上を占める。近年飲酒によるエンドトキシン血症がアルコール性膵炎の引き金となる可能性が指摘されている。本研究では自然免疫系の活性化がアルコール性膵炎発症に及ぼす影響について動物実験モデルを用いて検討した。マウスに20%エタノールを自由飲水させ、エンドトキシンであるリポポリサッカライド(LPS)を週2回腹腔内投与することにより膵炎が発症し、LPS投与回数の増加に伴い膵炎の程度が増強した。LPSは自然免疫の受容体であるToll-like receptor(TLR)4のリガンドであることより、エタノール投与と併行してTLR2リガンド(peptidoglycan)やTLR3リガンド(poly I:C)投与を行ったが膵炎は発症せず、アルコール性膵炎発症におけるTLR4刺激の重要性が示唆された。エタノール/LPS併用投与群では、LPS単独投与群と比べ、炎症性サイトカインであるIL-1β、TNF-αがより増加していたが、抗炎症性サイトカインIL-10の増加はLPS単独投与群に比べ軽度であった。膵炎発症抑制におけるIL-10の役割を検討するためIL-10欠損マウスにエタノールを投与したが膵炎の発症はみられず、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの不均衡状態の程度が膵炎発症に関与している可能性が推測された。さらに、T細胞、B細胞を欠損したSCIDマウスにエタノール/LPS投与を行ったが、野生型マウスとは異なり膵炎は発症せず、アルコール性膵炎発症に自然免疫系の刺激に加えて獲得免疫の活性化が重要と考えられた。以上の結果より自然免疫の過剰刺激がサイトカインの不均衡をもたらし、獲得免疫の活性化を介して膵炎発症に至る可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)