Research Abstract |
【研究1】拡大内視鏡で観察される胃腫瘍上皮下の血管を不明瞭化する白色不透明物質(white opaque substance,WOS)の有無と組織学的に検出される上皮内の脂肪滴の有無との相関を求めたところ,WOSの存在は,腫瘍上皮内に集積した脂肪滴の存在に依存していたことが判明した.本知見は,胃上皮性腫瘍に脂肪が集積することを証明した世界で初めての報告である. 【研究2】さらに,免疫組織化学的染色を行いWOSの有無と腫瘍の組織学的形質の関連を検索したところ,腸型の形質を獲得した腫瘍のみがWOS陽性であった.従って,WOSは,本来は吸収能を有さない胃粘膜が腫瘍化することにより,脂肪吸収能を獲得した現象であることが推測される.本知見も未だかつて報告がなく世界初の知見である. 【研究3】拡大内視鏡像の微小血管像とWOSを今まで開発した画像解析の手法を用い定量化を試みた.現在その精度については検討中であるが,今後,脂肪負荷試験に対する客観的評価法につながると考え,研究を継続している. 以上の研究成果を要約すると,拡大内視鏡により観察される腫瘍の微小血管像の画像解析による定量的解析法の研究過程で発見された白色不透明物質の正体は,本来は脂質の吸収能を有さない胃粘膜が腫瘍化することにより,腸型の形質を獲得し,脂質吸収能を獲得し集積した微小な脂肪滴であることが判明した.胃は本来,粘液や胃酸などを分泌する臓器であるが,「胃粘膜が腫瘍化することで吸収という機能を獲得した」という現象を世界ではじめて証明したオリジナリティーに富む知見であったので,原著論文にまとめ英文学術誌に投稿し受理された.さらに,効率よく腫瘍に吸収される脂肪製剤を開発すれば内視鏡による新しい早期胃癌の診断法になる可能性があり,本年度に国際特許出願(PCT/JP2011/71389)を完了した.
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