2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショック蛋白と酸化的DNA塩基損傷修復による心血管リモデリング抑制の研究
Project/Area Number |
21590883
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
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Keywords | 血管リモデリング / 塩基除去修復 / AP endonuclease / 血管傷害モデル / 酸化ストレス / HSP72 / 温熱刺激 / 血管炎症 |
Research Abstract |
動脈硬化性心血管障害の主要な機序のひとつとして、酸化ストレスの亢進によるDNA塩基損傷がある。塩基除去修復(base excision repair:BER)機構の主要酵素であるAP endonuclease(Ape1/ref1)は、この機序による心血管障害を抑制するkey factorの一つである。マウスのワイヤー血管障害モデルにおいて、傷害血管局所におけるApe1/ref1の著明な発現亢進を明らかにした。血管内皮前駆細胞(EPC)の導入により上記障害の血管リモデリングを抑制する実験系を確立した。加齢に伴い血管内皮前駆細胞(EPC)中のApe1/ref1発現量は低下し、EPC導入による血管リモデリング抑制効果は減弱することを明らかにした。次に、pcDNA/Ape1、pcDNA/LacZをadenovirusに高効率に組み込む手法を確立し、EPCにApe1を過剰発現させ障害血管局所に導入した。Ape1過剰発現EPCは、血管リモデリングを抑制した。発現細胞の細胞接着能を評価すると、酸化ストレス亢進状態(H_2O_2添加)で低下する細胞接着能は、Ape1/ref1依存性に回復することが明らかとなった。基準状態および酸化ストレス充進状態(H_2O_2添加)における酸化的DNA塩基損傷修復活性を、Ape1/ref1の発現状態から検討すると、同機構の活性充進が血管リモデリングの抑制に寄与することが明らかにされた。また同細胞において温熱刺激(41℃)が熱ショック蛋白(HSP)72の発現亢進をもたらし、活性酸素の消去作用を発揮することが明らかとなり、HSP阻害薬の前投与により、保護効果は消去された。血管傷害・血管リモデリングの過程が、Ape1によって軽減され、BER機構の調節による抗酸化修復機序とHSPによる抗酸化機序は相加的に作用し、新たな生体防御機構として抗動脈硬化作用を発揮しうる可能性が示された。
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