2010 Fiscal Year Annual Research Report
アンジオテンシンII受容体遺伝子多型が高血圧と関連して心血管事故に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
21590894
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 洋 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10294092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 泰彦 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90379206)
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Keywords | 心筋梗塞 / 遺伝子多型 / レニンアンジオテンシン系 / 高血圧 |
Research Abstract |
多施設共同研究である大阪急性冠症候群研究会(OACIS)の遺伝子バンクを用いて、レニンアンジオテンシン系・交感神経系の遺伝子多型と生活習慣病との関係を探索した結果、心筋梗塞発症者の中でアンジオテンシンII 1型受容体(AT1R)遺伝子多型(1166A→C)を有する頻度が高血圧合併症例において有意に高いことを見出した。AT1R遺伝子の蛋白への翻訳はAT1R第1166塩基部位に働くマイクロRNA(MiR155)により調節される。すなわちMiR155はAT1Rの1166A部位と結合してAT1Rの翻訳を抑制するが、多型である1166Cとは結合力が弱いため翻訳の抑制は減弱する。そこで高血圧を有する症例では、AT1R(1166A→C)多型の存在によりAT1Rの翻訳が抑制されず、アンジオテンシンIIシグナルが亢進し、心筋梗塞を始めとする心血管事故増大に関与するものと仮説を立て、以下の検証を行った。(1)臨床例におけるAT1R(1166A→C)多型の影響の確認:AT1R(1166A→C)多型が高血圧と関連して心血管事故増大に関与することが示されたOACIS研究登録3,300例と一般集団1000例と照らし合わせて解析を行ったが、一般集団との背景の差が大きく、一次予防において本多型が高血圧と関連して心筋梗塞発症に寄与するか否かは明らかに出来なかった。現在、年齢、性別他の背景をマッチさせた一般健常人集団との対比を行っている最中である。(2)内皮細胞との接着効果および単球細胞の遊走、マクロファージへの分化と泡沫化に関する検討:心筋梗塞を始めとした動脈硬化性疾患の進展、発症には単球細胞の内皮との接着、および内皮下への遊走、その後の、マクロファージへの分化と泡沫化が重要な役割を果たす。そこで本多型の存在が、こうした機序に影響を及ぼすか否かを検討した。しかしながらアンジオテンシンII刺激によるこれらの事象への誘導が1.0-1.3倍程度と軽微であるため、実験を頻回に繰り返したが、有意差を持って仮説を証明するのは困難と判断した。そこでまずはこれら細胞に於いてアンジオテンシンII刺激によりそのネガティブフィードバック機構としてMiR155の産生が亢進し、AT1Rの翻訳が抑制されること、そしてその抑制が多型を有する細胞においては減弱していることを確認することとした。
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