2010 Fiscal Year Annual Research Report
筋小胞体マイクロドメイン脱リン酸化調節異常を標的にした心不全治療法の開発
Project/Area Number |
21590932
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 安宏 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00260349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 雅文 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (90294628)
山本 健 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (50363122)
松崎 益徳 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60116754)
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Keywords | アデノ随伴ウイルスベクター / protein phosphatase 1 beta isoform / 筋小胞体 / カルシウム循環 / 心筋細胞 / 心不全 |
Research Abstract |
我々は、従来より、心不全において蛋白ホスファターゼ1の細胞内活性の異常な上昇が起こっており、そのために心筋細胞内Ca2+ハンドリングが低下していることを報告してきた。本年度の研究では、それら研究結果をふまえ、以下の点を明らかにすべく、実験を行った。 1,PP1・左室心筋特異的KOモデルを使って、心筋内のPP1b抑制が心不全進行に予防的に働くかどうか検討する。 2,Adenovirus、Adeno-associated Virus VectorによるPP1βの抑制的遺伝子介入が心不全動物モデル(MLPKO)で心不全進行を予防するかどうか検討する。 すでにノックアウトコンストラクトからES細胞からへの遺伝子改変コンストラクト注入が完了し、変異Flox遺伝子を有するマウスの作成を行っていたが、継代可能な生殖細胞への遺伝子変異導入が確認された。現在、Flox/+マウスと心筋特異的PromoterCre-recombinase発現マウスの掛け合わせを行っており、心臓特異的PP1b欠損マウス完成を待つのみである。 ただ、問題点として、現在までにFlox/Floxマウスの産子が得られておらず、ノックアウトコンストラクトの影響によりHomogygoteが作れなくなる可能性も残存している。もし心臓特異的ノックアウトマウスの作成に成功しないようなら、AAVベクターに導入したPPP1CBのshRNA遺伝子抑制系のデータを使って、心不全時のPP1b機能について解析することになる。これに関連して、心不全モデルマウス(MLPKO)にAdenoassociated virus 9でPP1β-short-hairpin (sh) RNA導入ベクターを静注で導入し、3ヶ月間で心不全進行がどのように変化するか、検討を行った。このAAV9ベクターを使った遺伝子導入実験では、LacZ発現で評価したところ、静注による全身投与にもかかわらず、極めて高い効率で、かつ、左室全体に均一な外来遺伝子の発現が確認できた。PP1β-shRNA導入群は、対照群に比べ有意に左室収縮性(EF)が改善し(心エコーで評価)、3ヶ月目に行った左室内圧測定では、明らかな心室拡張期特性(LV-dP/dt,tau)の改善がみられた。収縮性の指標であるLV maxdP/dtも、改善傾向がみられた。心不全では病態の進行に伴って、PP1βの発現レベルが上昇してくること、またそれに伴って、PLNリン酸化低下、筋小胞体Ca2+循環機能の低下などがみられることから、PP1βの特異的な機能抑制は新しい心不全治療として有効である可能性があると考えられた。
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Research Products
(6 results)