2009 Fiscal Year Annual Research Report
肺損傷と修復における細胞老化の役割とその分子機構の解明
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21591004
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
桑野 和善 Jikei University School of Medicine, 医学部, 教授 (40205266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 勝敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40321989)
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90468679)
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Keywords | 肺線維症 / 肺損傷 / 老化 / アポトーシス / 肺上皮細胞 / 肺線維芽細胞 |
Research Abstract |
(1)特発性間質性肺炎における細胞老化の存在と臨床及び病理学的指標との関連性 肺生検および肺癌の手術によって得られた肺組織を用いて、細胞老化の指標となるSA beta-gal staining, senescence-associated cyclin-dependent kinase inhibitors(p21)、抗加齢分子であるSIRT6に対する免疫染色を行った結果、正常肺、COPDでは、いずれもほとんど陰性であったのに対して、肺線維症では、多くの上皮細胞特に線維化になりつつある細気管支上皮細胞、肺上皮細胞に陽性所見がみとめられた。おそらく肺線維化は肺上皮細胞のアポトーシスに始まり、抵抗性のある細胞は老化することによって生存はするが、線維化にとって重要なサイトカインを産生し、正常な修復ができないことからさらなる線維化を促進する悪循環に陥るものと考えられる。また、TGFによって誘導されたヒト肺上皮細胞の老化は、SIRT6の強発現によって抑制される。また、喫煙暴露によって誘導された細胞老化も、SIRT6強発現やsiRNAを用いたp21の抑制によって減弱された。これらの結果より、肺線維症においては、肺上皮細胞の老化が病態に深く関与していると考えられた。論文はすでに投稿中である。 (2)肺上皮細胞と線維芽細胞の相互作用における細胞老化の意義 ヒト細気管支上皮細胞のprimary cultureは、TGFによって老化を誘導されたが、老化した肺上皮細胞はIL-1を産生し、IL-1は線維芽細胞のインテグリン発現を更新させ、TGFのシグナルを増強するという、線維化にとってpositive feedback機構がみとめられた。このことは、肺上皮細胞のアポトーシスによって上皮細胞が線維芽細胞に取って代わられるだけでなく、アポトーシスに抵抗性の生き残った上皮細胞は老化を誘導され、さらなる線維化促進に向かうと考えられた。
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