2011 Fiscal Year Annual Research Report
脂質転送蛋白と脂質応答性転写因子の腎線維化抑制作用の解析と新規治療薬の探索
Project/Area Number |
21591024
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
木村 秀樹 福井大学, 医学部, 准教授 (20283187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糟野 健司 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (60455243)
菅谷 健 東京歯科大学, 歯学部, 客員講師 (40381561)
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Keywords | 肝X受容体(LXR) / ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体(PPAR) / 脂肪酸結合蛋白 / PAI-1 / MCP-1 / 低酸素 / TNF-α / TGF-β |
Research Abstract |
1)ヒトメサンギウム培養細胞(HMC)でのPPAR-α,δγ発現の検討とPPAR活性の確認 HMCにおいて、ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体(PPAR)-α,β,γのmRNA発現をreal time PCR法で確認し、PPAR-γ,δ蛋白発現をImmunoblot法で確認した。PPAR-δ活性化薬のGW516(10μM)、PPAR-γ活性化薬のピオグリタゾン(Pio : 3μM)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるテルミサルタン(Telm : 10μM)はpPPRE-TK-lucの活性を増強し、Pioの活性はPPAR-γ阻害薬GW9662で、Telmの活性はPPAR-δ阻害薬GSK0660で特異的に阻害された。また、GW516,Telmは、PPARの下流遺伝子である心型(H-)脂肪酸結合蛋白(FABP)、liver X受容体-α(LXR-α)のmRNA発現を増強し、LXR発現増強はPPAR-δ特異的阻害薬(GSK-0660)で抑制された。Telmは、HMCにおいてTGF-β(25pg/ml)誘導性のPAI-1,TGF-β発現を抑制し、その抑制作用はPPAR-δが介在する可能性があった。 2)ヒト肝型FABP過剰発現の培養マウス近位尿細管上皮細胞株(L-FABP-mProx)とマウス(L-FABPTg)腎における低酸素刺激,TNT-αでのFABP、PPAR発現動態とPPAR活性化の抗炎症・抗線維化作用の検討 マウス近位尿細管上皮細胞(mProx)にヒトL-FABPのゲノム遺伝子を導入したL-FABP-mProxは、mProxに比してヒトL-FABP発現が約400倍以上であり、PPAR-αmRNA発現が10倍に、PPAR-γmRNA発現は1/10に減じた。PPAR-αの誘導因子とされるHepatocyte nuclear factor (HNF)-4αは、L-FABP-mProxで発現が増強し、低酸素刺激ではHNF-4αとPPAR-αは、両者とも20-40%程度減少したため、HNF-4αのPPAR-α発現への関連性が予想された。PPAR-αの下流遺伝子であるマウスL-FABPmRNAもL-FABP mProxでは約30倍に増加した。また、L-FABP-mProxでは、mProxに比して、基底状態のPAI-1, MCP-1, TGF-β, CTGF発現の低下があり、TNF-α誘導性のMCP-1発現が有意に低下した。L-LABPTgマウス腎でも、対照マウス(B6)に比して、HNF-4α,PPAR-α,マウスL-FABP mRNA発現の軽度の増加が認められ、腎組織においてもFABPとPPARが相互に作用することが窺えた。 以上より、FABPはHNF-4αを介してPPARと相互作用し、PPARが抗炎症・抗線維化作用を有する可能性が示され、また、PPAR活性を介し抗線維化作用を呈する実用ARBの存在が認められた。
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