2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規脳梗塞治療戦略としての選択的VEGF抑制療法の確立
Project/Area Number |
21591073
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
下畑 享良 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (60361911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 博中 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20231128)
高橋 哲哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20515663)
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Keywords | 脳虚血 / 血栓溶解療法 / VEGF |
Research Abstract |
本研究は治療可能時間を超えた組織型プラスミノゲン・アクチベーター(t-PA)の静脈内投与により生じる血栓溶解療法後の重大な合併症である脳出血に対する予防療法を確立することを目的とした.このために,ラット脳塞栓t-PA投与モデル(Okuboら)を使用した.このモデルにおいて,t-PAを脳虚血後1時間において使用すると脳梗塞サイズの縮小が見られるが,脳虚血後4時間において行うと,脳梗塞サイズの縮小は見られず,脳浮腫と脳出血の合併を認めることを確認した.本モデルを使用し,虚血性血管障害を防止し,それに基づく脳出血を抑制可能な薬剤のスクリーニングを行った.この結果,t-PAを4時間で投与すると,虚血辺縁部の血液脳関門において血管内皮細胞増殖因子(VEGF)シグナルカスケードが活性化すること,引き続いてマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)の活性化とそれに伴う基底膜構成蛋白の分解が生じ,脳出血を来すことを示した.また,MMP-9を含むいずれの変化も抗VEGF中和抗体(RB-222)により抑制された.以上より,VEGFシグナルカスケードはMMP-9の上流に存在し,tPA療法後の脳出血合併に関与する有力な治療標的分子であると考えられた. さらにVEGFシグナルカスケードを抑制するRB-222とVEGF受容体2型阻害剤(SU-1498)の2つ薬剤の作用機序と効果の比較を行った.この結果,以下のことが明らかになった. (1)いずれの薬剤もMMP-9活性化を有意に抑制し,さらに血管構築蛋白の分解を有意に抑制した. (2)いずれの薬剤も脳出血を有意に抑制した (3)しかしながら,5段階の生命・運動機能スケールの評価では,抗VEGF中和抗体のみ,対照群と比較し有意な予後の改善をもたらした. 以上より,抗VEGF中和抗体とVEGF受容体阻害剤では前者がより血栓溶解療法後の脳出血予防に有用である可能性が示唆された.
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Research Products
(3 results)