2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血急性期病態における血管内皮障害の機序解明とその制御法
Project/Area Number |
21591080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木田 佳樹 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (20403066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 一夫 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70301257)
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Keywords | 脳虚血 / 血管内皮 / 微小循環障害 / Rho-kinase / 一酸化窒素合成酵素 |
Research Abstract |
脳虚血病態においてRho-kinase阻害薬が脳保護効果を発揮する機序を検討するため、Rho-kinase阻害薬およびRho/Rho-kinaseアゴニストであるアンジオテンシンIIの受容体拮抗薬(ARB)による内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)リン酸化に対する影響を評価した。 ウイスターラットにRho-kinase阻害薬である塩酸ファスジルを腹腔内投与すると、投与4~8時間後の脳皮質においてeNOS-Ser1177のリン酸化が亢進していた。同部位はeNOS活性化に重要であるため、Rho-kinase阻害により速やかに脳実質内においてeNOSが活性化されることを示唆している。80分局所脳虚血モデルでは虚血直後、再灌流時(虚血80分後)のRho-kinase阻害薬投与でも脳保護効果を認めた。高血圧自然発症ラット(SHR)の局所脳虚血モデルでは脳皮質実質内小血管の内皮細胞においてRho-kinaseが虚血後早期から活性化していたが、これに対してARBを経口投与すると、Rho-kinase活性化が抑制されており、梗塞サイズの縮小を認めた。またSHRでは血圧上昇に伴いeNOS-Ser1177のリン酸化が低下するが、ARBの投与によりリン酸化レベルは保持され、eNOSによる血管機能も維持されることが示された。また同程度の降圧を示したヒドララジンに比しARBのeNOSリン酸化保持効果は強く、SHRの局所脳虚血モデルにおける梗塞サイズ縮小効果もより顕著に認められた。 以上の結果より脳虚血や高血圧による脳実質内小血管内皮のRho-kinase活性化には、アンジオテンシンII受容体活性化が関与し、これにより虚血病態が増悪する可能性が示唆された。またこの血管内皮におけるRho-kinase阻害によりeNOSは活性化され、脳虚血に対して保護効果を発揮することが示された。
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