Research Abstract |
[目的]我々が開発した胎児期作成皮質異形成ラットでは,異形成が片側の場合は自発てんかんを生じなかったが,グルタミン酸受容体の発現が異形成皮質において増加していた.両側に異形成を作成した場合は自発性てんかん放電を認め,Phase locking valueを用いて解析すると同側皮質-海馬間でてんかん活動の同期が高まることがわかった.今回は更に免疫組織学的解析を加え,てんかん原性のネットワーク構築を探索する.[方法]1)胎生18日目,母ラット子宮壁外から胎児頭蓋に冷却プローベで障害を加えて再び母ラット後腹膜腔にもどし局所皮質異形性モデルを作製.この時A.片側2か所で両側計4か所冷却プローベを接触,B.片側1か所で両側計2か所に冷却プローベを接触,C.両側計4か所の常温プローベを接触,の3グループに分けた.出生4週間目に記録用電極を両前頭部皮質・海馬に設置し生後35日~77日の間,脳波計測とビデオによる症状観察を行った.2)生後35日と77日に脳を取り出し病理的評価および免疫染色によるグルタミン酸受容体発現の定量を行った.[結果]1)生後50日以降にAグループの7匹中5匹に自発性のてんかん性放電を認め,発作時には無動,口部自動症を認めた.B,Cグループではてんかん性放電を認めなかった.2)異形成は前頭葉に存在したが,海馬には形態学的な異常は認めなかった.Aグループで生後28日の海馬でNMDA受容体2A,2Bの増加,生後77日でNMDA受容体R1,2A,2B,GLAST,GLT1の増加を認めた.[結論]両側前頭葉皮質に異形成を有するラットで海馬から始まる自発性てんかん放電を認め,発作症状は人間の内側側頭葉てんかんと類似していた.海馬の形態に異常はなかったがグルタミン酸受容体NMDAR1,R2A,R2Bに増加がみられた結果は,側頭葉外の皮質異形成の存在により海馬のグルタミン酸受容体を介するネットワークの構築が変化することを示唆した
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