2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規糖尿病性腎症治療標的分子としてのuPARの基礎的・臨床的意義の解明
Project/Area Number |
21591131
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
荒木 信一 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80378455)
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Keywords | 糖尿病性腎症 |
Research Abstract |
糖尿病性腎症(以下腎症)の発症・進展にウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター受容体(uPAR)が関与する可能性を探索するため、前向き経過観察研究において長期保存されている血清サンプルを用いて可溶型uPAR(suPARP)濃度をELISA法にて測定し、その臨床的意義を検討した。対象は、1997年から1998年に参加され経年的に経過観察されている正常あるいは微量アルブミン尿期かつeGFR 60mL/min以上の2型糖尿病患者186名である。主要評価項目は(1)維持透析療法の導入あるいはCre値2倍化と脳心血管疾患発症からなる腎・心血管複合イベント、(2)腎症病期の進展とした。観察開始時の平均年齢は60歳、平均糖尿病罹病期間13年、男性53.8%、微量アルブミン尿期21%、平均HbAlc 7.1%(JDS)であった。観察開始時から2011年末までの観察期間(中央値14年)において、腎・心血管複合イベントの発症は48イベント(21/1000人年)認められた。観察開始時のsuPAR濃度の中央値により対象症例を2分割し検討をおこなったところ、腎・心血管複合イベントは、suPAR濃度低値群14/1000人年、suPAR濃度高値群29/1000人年であり、suPAR濃度高値群では、Kaplan-Meier法による累積発症率が高率(P=0.01)であり、発症リスクは2.1倍(95%CI 1.2-3.9)であった。特に、Cre値2倍化に対するリスクは5.3倍(1.2-24.2)であった。一方、腎症病期の進展は60症例(44/1000人年)認められたが、観察開始時のsuPAR濃度高値群と低値群で発症頻度に差を認めなかった。以上の結果より、血清suPAR濃度高値は、糖尿病患者の腎症病期の進展には関与しないのもの、腎機能悪化・脳心血管イベントの発症の予知因子である可能性が示唆された。
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