2010 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス応答の破綻による膵β細胞障害とインスリン抵抗性の分子機構
Project/Area Number |
21591147
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石原 寿光 日本大学, 医学部, 教授 (60361086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 真由美 日本大学, 医学部, 講師 (80349993)
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Keywords | 糖尿病 / 膵島 / シグナル伝達 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
昨年度、高脂肪食で飼育したATF6αノックアウトマウスにおいて耐糖能障害を見出した。本年度まず、その病態を詳細に検討するため、電子顕微鏡を用い細胞内オルガネラの異常を検討した。その結果、ATF6αノックアウトマウスのβ細胞において小胞体の膨満化を高頻度に認めた。これは小胞体ストレスにより破綻した小胞体と考えられ、ATF6α欠損状態では、高脂肪食により増加した小胞体ストレスに十分対抗できないためと推察された。また、インスリン抵抗性の元での病態をさらに確認するため、Agouti yellow (Ay)マウスとの交配を行った。高脂肪食負荷時と同様、膵インスリン含量の低下を認めた。さらに、Akitaマウスと交配させたところ、高血糖のさらなる悪化を認め、ATF6αがβ細胞において小胞体ストレスに対抗する重要な役割を担っていることが強く示された(投稿準備中)。一方、肝臓では糖新生系の酵素とともに脂肪合成系酵素の発現亢進を認めたが、興味深いことに血中脂質は低下していた。これは、肝臓からの脂質放出系に異常が起こっていることを示唆すると考えられた。このように、ATF6αは糖尿病に関係する個々の病態を改善する方向にも、悪化させる方向にも働くことが明らかとなった。 また、小胞体ストレス応答の主要な要素であるPERK-eIF2α-ATF4経路の解析等から、新規の小胞体ストレス応答分子Zcchc12/sizn1を見出した。Zcchc12は、骨形成タンパク質(bone morphogenic protein)シグナル系を修飾するタンパク質として見出された新規の分子である。その遺伝子内に小胞体ストレスに応答する部位を同定した。また、本タンパクは核内へ移行して作用を発揮すると考えられるが、その分子内に塩基性アミノ酸に富む核移行シグナルを2か所同定した。現在、その発現を抑制した細胞を作製して詳細な機能を解析中である。
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