2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス応答とリン脂質酸化変性の意義-単球/マクロファージ接着亢進機序の解明
Project/Area Number |
21591165
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
及川 眞一 日本医科大学, 医学部, 教授 (30142946)
|
Keywords | リン脂質 / 単球 / 接着 / 酸化 |
Research Abstract |
本研究課題では、前年度までリン脂質phosphatidylcholine(PC)の酸化一次生成物であるphosphatidylcholine hydroperoxide(PCOOH)による単球細胞接着誘導について、その作用発現機序の探索を行ってきた。本年度は、主にPC以外のリン脂質やその酸化物にいて、それらの単球細胞接着に及ぼす影響を調べた。その結果、生体膜を構成するリン脂質の一種であるphosphatidylserine(PS)が、単球細胞(THP-1)のICAM-1への接着をPCOOHと同様に亢進することを新たに見出した。PCやphosphatidylethanolamine(PE)にはPSのような接着亢進作用は認めなかった。また、PSで処理したTHP-1細胞では、PCOOH処理で認められたものと同様のアクチンフィラメント・仮足構造の形成が認められた。PSによるTHP-1細胞の接着誘導は、PSをリポソームの構成成分(PS/PC混合リポソーム)として添加した場合にも認められた。さらに、PSの酸化一次生成物であるphosphatidylserine hydroperoxide(PSOOH)は、未酸化のPSよりもさらに強い接着誘導作用を示した。動脈硬化巣などにおいて、細胞死によって細胞膜外層に遷移したPSは、たとえば、死細胞がマクロファージによって認識され、貪食、消去されるためのシグナル"eat me signal"となることが知られているが、本研究の結果は、PSやその酸化物が、マクロファージの前駆細胞である単球を捕捉するシグナルとしても作用しうることを示唆するものである。
|