2011 Fiscal Year Annual Research Report
白血病におけるWT1の抗アポトーシス機能の解析とWT1分子標的療法の開発
Project/Area Number |
21591205
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾路 祐介 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20294100)
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Keywords | WT1 / leukemogenesis / molecular targeted therapy / apoptosis |
Research Abstract |
WT1遺伝子はほとんどすべての白血病細胞に高発現し抗アポトーシス機能を果たして白血病の発生に関与している。平成22年度までの研究によりWT1部分配列ペプチドが白血病細胞にアポトーシスを効率よく誘導すること、さらにこのWT1タンパクの部分配列ペプチドが白血病細胞の代謝状態を調節する複数の酵素と直接結合することを明らかにし、WT1タンパクによる白血病細胞の代謝調節が細胞の生存にとって重要な役割を果たしている可能性を明らかにすることができた。平成23年度は、WT1遺伝子による白血病細胞の代謝調節を明確にするためにWT1の4種のアイソフォームのそれぞれを強制発現した白血病細胞クローンを用いて1)WT1の2種のアイソフォームがストレス状況下における白血病細胞の増殖を促進すること、2)これらのWT1アイソフォームが、代謝経路上の複数の因子のmRNAの発現レベルを増加させ、これらの遺伝子発現がタンパクレベルでも増加すること、3)WT1がこの代謝経路の最終産物の産生を増加させることをin vitro系を用いて示し、WT1遺伝子の2種のアイソフォームが代謝経路上の因子の発現調節を介して、白血病細胞の代謝調節を行いストレスに対する抵抗性を誘導していることを明らかにした。 さらにWT1タンパクによる直接的な酵素活性の調節については、まず、白血病細胞の細胞質分画を用いてこの中の酵素活性がWT1部分配列ペプチドの添加により抑制された。これはWT1部分配列ペプチドの細胞死誘導の作用機序が代謝経路の抑制であることを明らかにし、この経路が白血病に対する新たな分子標的治療薬の標的となりうることを示している。
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