2011 Fiscal Year Annual Research Report
NK細胞リンパ腫におけるeIF4E高発現とL-asparaginaseによる抑制機序の検討
Project/Area Number |
21591222
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
杉本 耕一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50281358)
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Keywords | NK細胞腫瘍 / L-asparaginase / eIF4E / グルタミン / TCAサイクル / alpha-ケトグルタル酸 / アポトーシス / 癌細胞代謝 |
Research Abstract |
治療抵抗性のNK細胞腫瘍に対して特異的な抗腫瘍効果を発揮するL-asparaginase(L-ASP)の作用機序を、eIF4E抑制との関連から解析した。1U/mLのL-ASPはJurkat細胞においてNK腫瘍細胞株と同様のeIF4E発現の低下を引き起こす。この場合、L-ASP処理によって培養液中のアスパラギンのみでなくグルタミンが枯渇し、これにより細胞内のグルタミンおよびグルタミン酸の濃度が著明に低下した。また培養液中からグルタミンを除くかL-ASPで処理すると、TCAサイクルを構成するalpha-ケトグルタル酸、スクシニル酸、オギザロ酢酸がJurkat細胞内で著明に枯渇し、これに伴ってミトコンドリア膜電位の低下、アポトーシスが惹起された。細胞内に入ってalpha-ケトグルタル酸に変換されるdimethyl2-ketoglutarateを併用するとL-ASPまたはグルタミン除去によるTCAサイクルの炭素骨格分子欠乏、アポトーシスは回避された。グルタミンからTCAサイクルへの経路の薬理学的遮断によるアポトーシスも外からのalpha-ケトグルタル酸供給により抑制された。これらの結果からL-ASPがグルタミンの枯渇を介して細胞内のTCAサイクルの機能不全を起こしてアポトーシスを誘発することが示唆された。グルタミンへの依存性を司るとされるmyc遺伝子の発現を低下させるとL-ASPの殺細胞効果は低下した。また、Jurkat細胞のみでなく8例の急性リンパ性白血病(ALL)検体中4例でも明らかなグルタミンへの依存性が確認された。L-ASP処理またはグルタミン除去によりeIF4EのみならずeIF4B、eIF4G、eIF4Hなどの翻訳開始因子群の蛋白量、リン酸化が低下すること、これがalpha-ケトグルタル酸供給により回復することから、L-ASPはTCAサイクルの構成分子の枯渇を通じて翻訳開始因子群の抑制、ミトコンドリア機能の低下、アポトーシスを引き起こすことが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)