2011 Fiscal Year Annual Research Report
制御性T細胞とTh17細胞を標的とした慢性移植片対宿主病治療の開発
Project/Area Number |
21591244
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 嘉信 岡山大学, 大学病院, 助教 (60403474)
|
Keywords | 移植片対宿主病 |
Research Abstract |
同種造血幹細胞移植は、移植片対白血病効果により白血病に治癒をもたらす治療法として確立している。一方、合併症であるGVHDは原疾患以外の最大の移植後死亡原因である。GVHDは急性GVHDと移植後100日以降に発症する慢性GVHDに大別される。移植後期に発症する慢性GVHDは急性GVHDと発症時期が異なるだけでなく、その病態も異なると考えられている。急性GVHDに比べ慢性GVHDはこれまで十分な研究がなされていないのが現状である。臨床的にも有効な治療法がなく、急性GVHDの予防・治療に用いられるシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬では慢性GVHDに効果を認めず、その病態の解明と新たな治療法の開発は急務である。本研究においてはマウス同種移植モデルを使い、まずシクロスポリンが新規Tregによる長期の免疫寛容再構築を阻害するのに対し、m-TOR阻害剤は阻害しないことを明らかにし、慢性GVHD予防法としてm-TOR阻害剤が有用であることを明らかにした。次に、慢性GVHD発症マウスモデルを用いて体内のT細胞を解析したところ、従来考えられていたTh2細胞に加えてTh1細胞およびTha7細胞が移植後後期に増加し、慢性GVHDの標的臓器である肝臓や肺に浸潤していることが明らかとなった。さらに血清中のTh1(IFN-・)およびTh17(IL-17)サイトカインが増加していること、およびIFN-・ノックアウトマウス,IL-17ノックアウトマウスの移植後に慢性GVHDが軽減することからTh1およびTh17細胞が慢性GVHD発症に関与していることが強く示唆された。最後に合成レチノイドであるAm80は、Th1・Th17への分化抑制作用をもち、移植後に投与することで慢性GVHDが抑制されることが明らかとなった。本研究によりTh1・Th17細胞が慢性GVHD発症に関与すること、Am80がTh1・Th17細胞の抑制を介して慢性GVHDを改善することが明らかとなった。本研究の結果により、慢性GVHD発症の新たなメカニズムが解明されたとともに、これまでステロイド以外に有効な治療法がなかった慢性GVHDに対し、Am80は全く新たな作用機序をもつ薬剤として臨床応用される道が開かれた。
|
Research Products
(1 results)