2011 Fiscal Year Annual Research Report
Cas-Lノックアウトマウスを用いたリウマチ及び感染症モデルの病態・遺伝子解析
Project/Area Number |
21591278
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 哲史 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (00396871)
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Keywords | インテグリン / Nedd9 / HEF-1 / 接着分子 / シトロバクター / コラーゲン誘発関節炎 / 感染性大腸炎 / 病原性大腸菌 |
Research Abstract |
Cas-Lは、β1インテグリン下流の細胞内ドッキングタンパク質であり、インテグリン依存性の細胞遊走能に必須の分子である。本研究において我々は、リンパ球の炎症部位への遊走とCas-Lの関係に焦点を絞り、Cas-Lを中継点とするインテグリン経路の制御による治療応用の基盤を確立することを目的として、Cas-Lノックアウトマウスを用いた関節リウマチモデルの病態解析を行い、以下の様な知見を得た。 1.Cas-Lノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスにII型コラーゲンで関節炎(CIA)を誘導した結果、Cas-KOマウスではWTマウスと比較して、発症の遅延及び重症度の低下が観察された。さらに、関節滑膜の病理学的所見では、炎症細胞浸潤の程度が低下し、滑膜の増生・肥厚、骨破壊像を認めず、エックス線写真でも同様に、関節破壊を認めなかった。この結果は、Cas-Lの生物学的機能として知られているリンパ球遊走能及び接着能がCas-LKOマウスでは低下していることによって生じた可能性が考えられた。 2.Cas-LKOマウスとWTマウスの血清中抗II型コラーゲン抗体価を比較した結果、Cas-LKOマウスではコラーゲン抗体価が有意に低値であり、II型コラーゲン再刺激後の脾細胞の増殖反応も低下していた。また、Cas-LKOマウスでは、二次リンパ器官におけるT・B細胞数・比率の異常を認め、T・B細胞の機能異常の存在が示唆された。 3.Cas-LKOマウスとWTマウス間での骨髄細胞移植実験では、Cas-LKOマウス骨髄を致死量の放射線を照射したWTマウスへ移植した群[KO→WT]と、WTマウス骨髄を致死量の放射線を照射したCas-LKOマウスへ移植した群[WT→KO]にCIAを誘導したところ、[KO→WT]では、[WT→KO]に比較して関節炎重症度の低下を認めた。この結果から、Cas-LKOマウスの関節炎重症度の低下の一因として、骨髄細胞レベルの異常が示唆された。 4.Cas-LKOマウスとWTマウスの脾臓由来CD4陽性T細胞に対し、抗CD3抗体と抗CD28抗体、或いは、抗CD3抗体とfibronectinで共刺激を行い、その細胞増殖反応を評価した。その結果、抗CD3抗体/fibronectinによる共刺激系では、Cas-LKOマウス由来CD4陽性T細胞では、WTマウスの場合に比較して、細胞増殖反応が低値であった。このことから、Cas-Lは・1インテグリンリガンドであるfibronectinとCD3との共刺激系のシグナル伝達系において、重要な役割を果たしていることが示唆された。一方で抗CD3抗体/抗CD28抗体での共刺激ではCas-LKOマウスにおいて、WTマウスと比較して細胞増殖反応が高値であった。その機序は不明であり、今後更なる研究の進展が期待される。
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