2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト制御性T細胞への分化誘導や抑制機能を高める生理活性物質の解析と治療への応用
Project/Area Number |
21591282
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
長谷川 均 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40164826)
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Keywords | 制御性T細胞 / Foxp3 / 核内受容体リガンド / PPAR |
Research Abstract |
RAなどの自己免疫疾患の制御には、制御性T細胞(Treg)が重要な役割を演じているが、Foxp3の誘導メカニズムは十分解明されていない。また、ヒトでは、TCR刺激やTGF-betaによって誘導されるFoxp3の発現は、低レベルで一過的であり、この発現細胞は抑制機能を持たないことが明らかになった。ヒトFoxp3の発現を増強させ、安定させる物質があれば、ヒトにおいても抑制機能を持つ誘導型Treg(iTreg)が誘導できる。このため、本研究では、制御性T細胞の分化誘導を促進させる生理活性物質を網羅的に解析し、これらの物質のヒト制御性T細胞の分化誘導における役割と機序を解明することを目的とする。まず最初に、生理活性脂質や核内受容体リガンドなどのライブラリーから、Foxp3の発現が増強する物質をスクリーニングし、14種類得た。これらのうち、PPARalphaおよびgammaアゴニストのヒトTregの分化誘導機序について解析した。方法として、PPARalphaおよびgammaアゴニストを添加したiTregのFoxp3発現およびサイトカイン量、抑制試験、Foxp3プロモータ領域のメチル化などを検討した。その結果、nTregに対しては、PPARalphaおよびgammaアゴニストを添加しても、Foxp3の発現増強や抑制機能の増強は起こらなかった。一方、PPARアゴニストを投与した群では、コントロール(DMSO処理)群と比較して、5種類ともFoxp3の発現増強がみられた。機能的には、TGF-βのみで誘導したコントロールiTreg細胞は抑制機能はないが、PPARアゴニスト投与群では、5種類とも抑制機能を持ち、28日間の長期培養でも機能は維持された。この抑制機能の獲得は、PPARアゴニストがTGF-betaと協調してDNMT発現を抑制することによって、Foxp3遺伝子プロモーター領域の脱メチル化を促進させ、Foxp3の発現が維持された。ATRAは、PPARアゴニストと協調して、iTregの誘導および抑制機能を亢進させた(J.Immunol 2010)。また、LPCはnTregからのTGF-betaの産生を亢進させ、免疫抑制機構を増強する(論文作成中)。
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