2011 Fiscal Year Annual Research Report
感染症制圧に向けた易感染宿主の好中球機能異常解析と感染防御能モニタリングの確立
Project/Area Number |
21591300
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
斧 康雄 帝京大学, 医学部, 教授 (10177272)
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Keywords | 好中球 / 遊走能 / 活性酸素産生能 / 細胞膜抗原 / 遺伝子発現 / セプシス / 易感染性宿主 |
Research Abstract |
易感染性宿主に発症する重症・難治性感染症の制圧に向けて、好中球機能を中心に感染防御能を評価した。 (1)好中球の機能解析 zymosanや緑膿菌、肺炎球菌の食作用に付随する好中球の活性酸素産生能の測定は全血化学発光法で評価したが、肝硬変、SLEなどのステロイド使用患者、骨髄腫、熱傷患者などの易感染性宿主で低下していた。好中球の遊走能の低下はコントロール不良の糖尿病患者でみられた。易感染性宿主のセプシス発症時の著しい遊走能低下は、基礎疾患よりは幼弱好中球数と相関した。薬剤耐性菌と感性菌を刺激物/遊走因子とした場合に、薬剤耐性による好中球の応答性に有意差を認めなかった。 (2)重症感染症に伴う好中球表面の受容体発現解析および細胞内遺伝子発現解析 セプシスおよび重症細菌性肺炎患者の好中球遊走活性において、IL-8、fMLP刺激による遊走速度は健常人に比較して低下していたが、その低下の一因として、細胞膜上のIL-8受容体の発現低下、細胞内のIL-8のmRNAの低下、IL-8刺激によるMAPK familyのリン酸化の低下が関与することを明らかにした。特にステロイドパルス療法患者では、その傾向は顕著であった。これらの研究成果は論文作成中である。遺伝子導入によりHL-60にIL-8受容体を発現させるとIL-8による遊走や活性酸素産生能に対するpriming効果が増強することから、IL-8受容体の発現量と遊走活性の関係が基礎的にも証明された。好中球内の遺伝子発現解析では、肺炎やセプシス患者で検討したTLR-4、CD14、TNF-α、IL-6、Mac-1の5種類の遺伝子のうち、1~3種類の遺伝子発現が増加していたが、重症セプシス/敗血症性ショック例では、上記の遺伝子発現が低下する傾向がみられた。この研究成果は論文投稿中である。セプシス患者の好中球膜上抗原発現のFACS解析においては、TLR-2、TLR-4、CD14、CD64の発現増加、CD11b、CD16の発現減少を確認した。また、回復期には健常人と同様のレベルまで細胞膜上の抗原発現は回復した。この研究成果の一部は論文報告した。
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