2010 Fiscal Year Annual Research Report
年齢依存性てんかん性脳症の分子病態解明と分子シャペロン療法開発
Project/Area Number |
21591312
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
加藤 光広 山形大学, 医学部, 講師 (10292434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 和幸 山形大学, 医学部, 医員 (20436215)
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Keywords | てんかん / ウエスト症候群 / 大田原症候群 / 遺伝子 / 分子シャペロン |
Research Abstract |
年齢依存性てんかん性脳症の代表的疾患である大田原症候群とウエスト症候群に対して私たちが因果関係を明らかにしたARX遺伝子の解析を行った。2家系の家族性大田原症候群において,ARX遺伝子の終末エクソンであるエクソン5にそれぞれ異なる2つのフレームシフト変異をみいだした。エクソン5以外のARX遺伝子のフレームシフト変異は,nonsense-mediated mRNA decay(NMD)によって翻訳蛋白の産生されないナル変異であり,ARXの機能喪失によって重度な脳形成障害をきたす外性器異常を伴うX連鎖性滑脳症(XLAG)の原因となる。しかし,2家系の症例では脳形成障害を認めず,ウエスト症候群や精神遅滞の原因となるARX遺伝子のポリアラニン配列伸長変異と表現型は類似していた。ARXは転写因子であり,その基本機能は転写抑制である。ポリアラニン配列の伸長変異は転写抑制を増強させる機能獲得変異であり,XLAGをきたす機能喪失変異とは異なる。2家系の変異は,その位置からともにエクソン5に存在するアリスタレスドメインの転写・翻訳を阻害すると考えられた。アリスタレスドメインは,ARX遺伝子の構造において,唯一転写亢進に作用する部位である。一般に終末エクソン内のフレームシフト変異はNMDを逃れることが知られており,本研究の2家系においてもアリスタレスドメインを欠損した不完全なARX蛋白が産生されていることが推測される。アリスタレスドメインの欠損によって,転写抑制が増強されることが予想され,ポリアラニン配列の伸長変異同様に,本研究で見いだされたエクソン5のフレームシフト変異も機能獲得変異と考えられる。 本研究によって,ARX遺伝子の機能獲得変異という共通する病態が,大田原症候群とウエスト症候群の間に明らかにされ,臨床的に想定されていた両者の関連性が分子病態レベルで解明された。
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Research Products
(12 results)