Research Abstract |
新生児の脳は抑制よりも興奮が起こりやすくプログラムされているため,けいれん発作を発症しやすく,一般に薬物治療に対する反応が芳しくない.新生児の脳では,成人で有効な抗痙攣剤が効きにくい背景があるが,臨床病態に近い動物モデルがないため,治療法解明のための研究も進んでいない.本研究では,新生児に脳の構造・成熟度が近い新生仔豚に低換気負荷を与え,その深度を調節することによって,高率に電気生理学的・臨床的けいれん発作を呈する大動物モデルを確立した. 研究の初期段階で独自に開発した暗視カメラとテレメトリー脳波観察システムにより,新生仔豚などの大動物モデルにおいて,動物をケージ内で自由に運動させながら,画像と同期した電気生理学的情報を72時間記録する環境が整備された.続いて,圧縮技術により,長時間の脳波情報を後ろ向きに迅速レビューできるアルゴリズムを確立した.使用した新生仔豚の品種が前任地において確立したモデル動物と異なったため,低換気負荷深度の確立に時間を要したが,60分間の高度低換気負荷により,11頭中7頭に電気生理学的発作波を,5頭に発作波と関連した臨床的発作を認めるモデルを確立することができた.これらの動物の脳病理組織学的損傷は,臨床的発作を呈した症例において非常に強く認められ,Parasagittal Cortexでは50%程度,Temporal Cortexで20%,海馬CA1領域で30%程度の神経細胞が急性壊死を起こしていた.2010年夏に九州地方で発症した口蹄疫(約5か月間動物搬入停止)及び2011年春に発生した東日本大震災(研究代表者が延べ5週間にわたり被災地に出向)の影響で,実験計画は大幅に遅れをとり,Bumetanideを用いた介入研究は,本報告書作成段階でも途上にあるが,2012年秋までに予定実験を終了,順次ビデオ脳波解析・病理組織学的検索を終える予定である.
|