2010 Fiscal Year Annual Research Report
急性骨髄性白血病におけるNotch1シグナルの検討:新たな分化誘導療法をめざして
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21591355
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中村 誠 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 医学研究員 (10422685)
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Keywords | Notch1シグナル / 顆粒球分化 / 急性骨髄性白血病 |
Research Abstract |
これまで、Notch1シグナルの増強により顆粒球の分化が遅延することを、顆粒球系前駆細胞32Dを用いた実験系で明らかにした。一方、我々の研究室で樹立された小児急性骨髄性白血病由来の細胞株ではNotch 1受容体の高発現が高率に認められており、Notch 1シグナルの増強が急性骨髄性白血病細胞の未分化性の維持や増殖能の亢進に寄与している可能性がある。本年度は、ヒト急性前骨髄性白血病由来細胞株HL-60に、ICN1遺伝子あるいはMam遺伝子を導入してNotch1シグナルをそれぞれ増強あるいは抑制し、増殖や分化に与える影響を検討した。Notch1受容体の細胞内領域であるICN1には導入された細胞のNotch1シグナルを持続的に活性化する働きがあり、Mamには内在性のICN1や外部から導入されたICN1に結合してその活性を持続的に抑制する働きがある。ICN1が導入された細胞群またはMamが導入された細胞群の増殖能はコントロール群の増殖能と有意差は認められなかった。一方、レチノイン酸を添加して分化を誘導した場合、Mamが導入された細胞群の分化の進行度はコントロール群と有意差を認めなかったが、ICN1が導入された細胞群の分化は有意に遅延した。すなわち、HL-60細胞においてNotch1シグナルは分化を抑制するが、内在性のNotch1シグナルを阻害しても分化が誘導され増殖が抑制される現象は確認されず、内在性のNotch 1シグナルが同細胞の未分化性の維持や増殖能の亢進に寄与しているとはいえなかつた。今回、遺伝子の導入効率の高さからHL-60細胞を用いたが、導入方法を工夫して他の急性骨髄性白血病由来の細胞株についても同様の検討を行う必要がある。
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