2011 Fiscal Year Annual Research Report
急性骨髄性白血病におけるNotch1シグナルの検討:新たな分化誘導療法をめざして
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21591355
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中村 誠 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 医学研究員 (10422685)
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Keywords | Notch1シグナル / 顆粒球分化 / 急性骨髄性白血病 |
Research Abstract |
顆粒球・単球系細胞の分化・成熟におけるNotch1シグナルの役割について、2000年頃から複数のグループにより報告されているが、同シグナルが分化を抑制すると報告するグループがある一方で分化を促進すると主張するグループもあり、多角的で詳細な検討が求められていた。 我々は、Notch1シグナルの活性化因子ICN1、あるいは不活化因子DNMAML1(MAML1のドミナントネガティブ)を顆粒球系前駆細胞32DとHL60にウイルスベクターを用いて導入したのち成熟顆粒球への分化を誘導した。統計学的有意差をもってNotch1シグナルの活性化が顆粒球分化を遅延させること、内在性のNotch1シグナルの不活化が顆粒球系への分化に影響しないことを示した。我々の用いた方法の優位性は、遺伝子の導入効率が2割から6割と高く分化の誘導に先立ち遺伝子の導入された細胞を選別し増殖させる必要がないこと、マーカー遺伝子GFPの発現により遺伝子導入細胞をフローサイトメトリー法で識別し解析できるため、導入細胞と非導入細胞が混在した状態で分化を誘導できることの二点である。さらに、活性化因子ICN1と不活化因子DNMAML1を同時に導入したところ分化の遅延が解消された事から、ICN1がMAML1を介した機序により分化を抑制する事が示された。興味深い事に、分化が誘導され細胞死に至る培養条件においても、Notch1シグナルを活性化された細胞の一部は未熟な芽球様の形態を維持し、増殖能を保持していた。すなわち、Notch1シグナルの活性化が顆粒球系前駆細胞の白血病化に関与する可能性が示唆された。以上の内容は、2011年12月にサンディエゴで開催された米国血液学会で発表した。
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Research Products
(1 results)