2009 Fiscal Year Annual Research Report
第VIII因子活性化・不活化機構の解明と新規凝固・抗凝固薬への応用に関する基礎的研究
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21591370
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
野上 恵嗣 Nara Medical University, 医学部, 講師 (50326328)
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Keywords | 血液凝固 / 第VIII因子 / 活性化 / 不活化 / プラスミン / 活性型第VII因子 / プロテインS / 結合部位 |
Research Abstract |
血液凝固第VIII因子(FVIII)は、欠乏では重篤出血(血友病A)を、増加では易血栓を惹起するため、出血/血栓の相反する病態で極めて重要である。凝固促進にはトロンビン(IIa)のFVIII活性化が、過凝固抑制には活性型プロテインC(APC)による不活化が重要であるが不明な点も多い。従ってFVIII中心の凝固血栓形成やその抑制機序の解明は、血友病Aの治療戦略、血栓形成病態に応じた抗血栓凝固療法の発展に寄与する。従来の凝固研究は、内因系/外因系/凝固抑制系/線溶系に分け展開してきたが、凝固過程は複数系が同時進行していく概念が最近支持されている。我々は、FVIII活性化/不活化機構における線溶系プラスミン(Plm)、凝固抑制系プロテインS(PS)、外因系(FVIIa)の役割について新知見を得た。(1) Plm:極少量PlmでもFVIII活性を極めて反応初期段階で上昇させ、速やかに低下させた。PlmはFVIIIを限定開裂し、同部位を開裂するAPCやFXaよりFVIII活性化/不活化はより急峻であった。Arg^<336>/Arg^<372>/Arg^<740>開裂を制御するFVIII A2(主にArg^<484>)とPlm活性ドメインとの結合にはLys結合部位(LBS)非依存性結合機序が、Lys^<36>開裂を制御するA3 (1691-1705/1804-1818のLys主体)とkringlel-3との結合にはLBS依存性結合機序が働いており、FIXaがPlm-FVIII反応を巧みに制御していた。また、Plmは向凝固能も有しており、これにFVIIIが強く関与することがわかった。(2) PS : PSはAPCの補因子として過凝固抑制するが、APC非依存性にPSはFVIIIと直接結合し、FVIII-FIXa結合を競合阻害して凝固抑制していた。その際、PSはFVIII A2(488-490残基)とA3ドメインに結合して作用し、この抗凝固能はC4-binding蛋白により増強していた。(3) FVIIa : FVIIaはFVIII活性を凝固初期相の極早期に4-5倍上昇させ、その機序にはArg^<372>/Arg^<740>開裂が関与していた。その際FVIIaはFVIII A2と結合し、この活性化はFIIaより急速であり、VWF存在下でも生じるため、FVIIa-FVIII反応はFVIIa-FX反応と同様に凝固初期相に働きうることが示した。この反応制御に組織因子が必須であった。またFVIIIインヒビター存在下でもFVIIaが作用しうること、特にtype2 C2インヒビター存在下ではFVIIa効果が持続しやすいこともわかった。
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Research Products
(9 results)