2011 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュ農村部住環境中の回虫抗原量と小児の喘息症状との関連
Project/Area Number |
21591373
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
岩田 力 東京家政大学, 家政学部, 教授 (00134578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 卓也 東京家政大学, 相模原病院臨床研究センター, 室長 (50297686)
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Keywords | バングラデシュ / 室内塵 / 回虫抗原 / 気管支喘息 |
Research Abstract |
衛生状態が良くなると逆にアレルギー疾患が増加するといういわゆる衛生仮説があるが、それが寄生虫感染率が高い地区においても成立するかどうか、これまで我々のバングラデシュ農村部における調査でそれを否定する結果を示してきた。そして小児の気管支喘息有病率と回虫抗原に対する特異IgE抗体価が正の相関を示すことの理由として、住環境中に回虫抗原が存在しそれが吸入抗原として作用する可能性を考慮した。その仮説を証明するため、3年間の研究期間において、方法論的に限界はあるものの回虫抗原を測定する系を作成した。以前の研究と同じバングラデシュ農村部の小児を対象としてISAAC質問票を用いた喘鳴の有無を調査し、それぞれの家庭の室内塵を採集した。対象小児は2001年調査(5歳)と同じ群であり、現地の訪問調査で14歳時における調査が可能であったものは前回非喘鳴群97名(うち今回調査でも非喘鳴は79名)、前回喘鳴群142名中今回も喘鳴群に該当するものは61名であった。すなわち、5歳時点での喘鳴群142名は、14歳時点で61名(43%)が現在喘鳴群であった。2001年に喘鳴のあった群は2011年でも有意に喘鳴があり、2001年に喘鳴のなかった群は2011年でも有意に喘鳴がなかった(p<0.0001:χ2検定)。これら両群の小児の寝具からハウスダストを採取した。ハウスダスト中の回虫抗原量は、喘鳴群で平均5.25μg/gダスト(95%信頼区間:1.15-9.36)、非喘鳴群で2.54μg/gダスト(95%信頼区間:1.67-3.41)で、喘鳴群に多い傾向が見られたが、両者の間に有意な差は認められなかった(p=0.200、t検定)。 今回開発した回虫抗原測定系では、回中の存在しない日本の室内塵からもある程度何らかのものが検出されるなど、未知の交差抗原の存在も考慮される。今後のより精密な検索が必要である。
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