2010 Fiscal Year Annual Research Report
ネフローゼ発症における糸球体ポドサイトの分子複合体シグナル伝達異常の解明
Project/Area Number |
21591381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 健一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70408483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 隆 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (70151256)
関根 孝司 東邦大学, 大橋病院, 教授 (50255402)
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Keywords | ネフローゼ / ポドサイト / スリット膜 / 分子複合体 / シグナル伝達 / MYH9 / NMMHC-IIA / 巣状糸球体硬化症 |
Research Abstract |
小児の難治性腎疾患であるネフローゼ症候群の病態生理は未解明であり、なかでもステロイドによる寛解が困難な巣状糸球体硬化症(FSGS)は高率に末期腎不全に移行する。近年、遺伝性のネフローゼ症候群における責任遺伝子(ポドサイト関連分子)の同定が進み、ネフローゼ症候群の病態生理が部分的に明らかにされ始めた。私たちは、小児で一般的に遭遇する特発性ネフローゼ症候群(特にFSGS)におけるポドサイト関連分子の挙動について研究を進めてきた。 平成22年度までに、ポドサイト細胞骨格の維持に重要と考えられるnonmuscle myosin heavy chain IIA (NMMHC-IIA)の正常ラットにおけるポドサイト内の局在を免疫電顕を用いて検討し、これがポドサイトの一次突起に局在することを見出した。この部位は細胞骨格のactin蛋白が存在する部位であり、またこれまでに明らかにされた遺伝性ネフローゼ症候群の責任蛋白(podocin, TRPC6など)の局在(足突起)に近く、これらの蛋白との相互作用が十分想定される。実際、ネフローゼ症候群のモデルであるPAN腎症ラットでNMMHC-IIAが蛋白尿発症早期から発現が低下することを示した。他のポドサイト関連分子であるpodocalyxinの発現低下はなく、蛋白尿発症に関して比較的上流のマーカーであることが示唆された。また、ヒトの腎生検検体を用いて免疫組織染色を行い、高度蛋白尿を呈する慢性糸球体腎炎(IgA腎症、紫斑病性腎炎、膜性腎症など)やステロイドに感受性のある予後良好な疾患である微小変化型ネフローゼ症候群ではNMMHC-IIAの発現は低下せず、FSGSのみでNMMHC-IIAの発現低下が示された。このことから、NMMHC-IIAが単に蛋白尿ではなくFSGSの発症に重要な役割を担っていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)