2010 Fiscal Year Annual Research Report
ガンシクロビル耐性ヒトサイトメガロウイルスのUL97遺伝子変異に関する研究
Project/Area Number |
21591392
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
堤 裕幸 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80217348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
要藤 裕孝 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10404659)
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Keywords | CMV / 分子疫学 / ガンシクロビル / UL97 / 免疫不全 |
Research Abstract |
983~2010年までの期間、免疫健常児、免疫不全児を問わず、先天性、後天性のサイトメガロウイルス(cytomegalovirus : CMV)感染症患児の尿より分離したCMVの株数は70株余りとなった。これは、ガンシクロビルが導入される以前の約15年間、そして以後の13年にわたるCMV分離株であるが、実際にガンシクロビルを長期間投与された後にCMV感染が生じ、CMVが分離された例は無かったので、これ以後のCMVの遺伝子解析は、ガンシクロビル使用歴の無い健常児から分離されたCMV株を用いて行うこととした。これらを組織培養にて再分離を試み、再分離されたCMV株よりDNAを抽出・精製した。再分離ができなかった場合はCMVの保存液より直接DNAの抽出を行い精製した。あるいは血液から直接DNAを抽出し精製した。それらDNAを用いてPCR法にてUL97遺伝子の618bp(コドン439-645)を増幅し、そのPCR産物の遺伝子配列を、オートシークエンサーをもちいて解析した。それらをCMVの標準株であるAD169株を基準として遺伝子変異の有無(ヌクレオチドの変異、アミノ酸の変異)を検討した。ガンシクロビル耐性を与えると報告されているM460V、M460I、A594V、L595S、L595F、C603Wなどの変異は観察されなかった。このことは、これらUL97のガンシクロビル耐性変異は、あくまでもガンシクロビルの長期使用によって誘発される変異であることを強く示唆している。一方、D605E変異が90%以上という高率で検出された。この変異は欧米にても報告されているが、その頻度は10%前後と低く、この変異とガンシクロビル耐性については無関係とされている。ところが中国においては移植患者から分離されたCMVであるが、D605E変異が本研究と同様に高率に検出されている。このD605E変異はアジアに流布しているCMV株の遺伝子マーカーとなりうるものかもしれない。今後はサイレントな遺伝子変異を含め検討を進める。
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Research Products
(3 results)