2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトでの薬剤耐性ヘルペスウイルス感染症の病態解明と薬剤感受性迅速診断システム開発
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21591402
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
西條 政幸 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 部長 (50300926)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / アシクロビル / ガンシクロビル / 薬剤感受性 / 薬剤耐性 / 迅速診断 / 免疫不全 / 臓器移植 |
Research Abstract |
【研究目的と意義】免疫不全患者におけるヘルペスウイルス感染症では重篤な症状を呈し,時に致死的である.原発性免疫不全症候群Wiskott-Aldrich症候群患者における,単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)による初感染,繰り返す感染症(再活性化),アシクロビル(ACV)やフォスカルネット(PFA)などの薬剤耐性HSV-1感染症について,臨床経過と分離ウイルスの詳細を解析することにより検討した.【材料と方法】患者は3歳の時にHSV-1に初感染した.繰り返すHSV-1性皮膚病変はACVにより治療された,7歳時には難治性HSV-1皮膚病変を発症し,分離ウイルス(TAS株)がACV感受性であったためにACV持続点滴療法により治療された。しかし,8歳時には再び難治性皮膚病変が出現し,分離ウイルス(TAR株)がACVに耐性を示したため,vidarabine投与により治療した.さらに12歳の時には,免疫能構築を目的とした同種骨髄移植を施行したが,ACV耐性HSV-1感染症が増悪したために,PFA投与による治療を開始したが,最終的にはPFA耐性株が出現した.これらの臨床経過および分離ウイルス(ACV感受性株,ACV耐性株,PFA耐性株)を詳細に解析した.【結果】以下の知見を得た.1)ACV耐性vTK欠損HSV-1 TAR株は,ヒトでは潜伏感染し,さらに再活性化する.2)vTK欠損HSV-1 TAR株はvTK陽性HSV-1 TAS株とともに再活性化する.3)薬剤感受性試験(プラーク減少法)によりACV感受性と判定される分離ウイルスの中に,有意に高い割合でACV耐性株が含まれている.4)本患者におけるACV耐性HSV-1感染症皮膚病変から分離されたウイルスには,TK遺伝子に変異のある複数種類のHSV-1(ACV耐性株)が存在する.【考察】この研究成果は,免疫不全患者においてTK変異による薬剤耐性HSV-1感染症が発生すると,それは潜伏感染し,そのHSV-1による感染症は生涯繰り返されることを示している
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Research Products
(3 results)