2011 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠および胎児発育におけるスフィンゴ脂質代謝の役割の解明
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21591414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水岸 貴代美 京都大学, 医学研究科, 研究員 (70518448)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / 妊娠 / 胎児発育 |
Research Abstract |
スフィンゴ脂質は多様な生物学的活性を有する脂質メディエーターであり、様々な疾患発症過程に重要な役割を果たしている。これまでの遺伝子改変マウスを用いた研究により、スフィンゴ脂質代謝は正常妊娠中に活性化しており、代謝バランスに異常がおこると母親側の要因によりほぼ全ての胎児が妊娠早期に子宮内で死亡することが明らかになっている。昨年度までの研究により、スフィンゴ脂質代謝バランスの異常によって起こる流産のメカニズムを明らかにした。スフィンゴシンキナーゼ(Sphk)遺伝子改変マウスの妊娠脱落膜組織では、野生型マウスに比べて、一群の炎症性ケモカインのリガンドやその受容体の発現が著明に増加しており、その部位に一致して好中球が浸潤していた。その結果、血管を含む脱落膜組織の障害が引き起こされ、胎児は子宮内で死亡することが明らかになった。今年度はこの結果に基づいて、ケモカイン受容体やこの受容体を高度に発現している白血球を抗体や阻害剤で抑制する実験をさらに推し進めた。Sphk遺伝子改変マウスの雌からの胎児は、胎生8.5日目までにほぼ全て死亡するが、ケモカインの働きを抑制することにより、胎生8.5日目を超えて約40%の胎児が生存し、出産まで到達する仔もみられた。また、ヒトにおけるスフィンゴ脂質代謝の意義を検討するため、人工妊娠中絶または自然流産の患者から脱落膜組織を採取し、脱落膜細胞を分離・精製した。ヒト脱落膜細胞にスフィンゴシンキナーゼの阻害剤やsiRNAを投与し、検討中である。
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