Research Abstract |
本研究の目的は,薬剤アレルギーがなぜおこるかという未解決の問題において最も重要と思われる,反応の諸端となるT細胞の薬剤抗原認識の詳細を解析し,明らかにすることである。我々は,抗原提示細胞がMHCハプロタイプの全く一致しない場合でさえ,薬剤特異的な増殖反応を呈する薬剤反応性T細胞クローンを見いだした。さらにこの特殊な反応パターンを呈する薬剤特異的T細胞は,抗MHC抗体の存在下でも,薬剤特異的増殖反応をおこした。この結果は,MHCの厳格な拘束を受けなくても,薬剤特異的にT細胞は活性化するというPichlerたちの意見を支持するものである。T細胞,薬剤および抗原提示細胞間におこっている薬剤抗原認識において,特に重要であると考えられるのは,T細胞受容体と薬剤,抗原提示細胞上のMHCとの相互作用であろう。従って,我々はこの部分をより詳細に調べるため,これまで我々が樹立してきた種々の薬剤特異的T細胞クローンまたはラインから,薬剤特異的T細胞受容体のcDNAをクローニングして,マウスなどの動物の細胞に薬剤特異的T細胞受容体を強制発現させた細胞を作成し,種々の状況下における薬剤刺激に対する反応から,薬剤特異的T細胞受容体のどの部位で薬剤を認識しているか,またMHCと薬剤,および薬剤特異的T細胞受容体との接触部位について,詳細に解析することを計画している。現在,薬疹患者5名から約20個の薬剤反応性T細胞クローンを樹立した。今後,その機能的解析およびT細胞受容体遺伝子の解析から,薬剤にどのような部分が反応して,薬疹を生じせしめるのかを検討する。
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