2011 Fiscal Year Annual Research Report
難治性アレルギー皮膚疾患の新規バイオマーカーと新規治療法の開発研究の新たな挑戦
Project/Area Number |
21591471
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
池澤 善郎 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (90046128)
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Keywords | アトピー性皮膚炎(AD) / 痒み / アレルギー性鼻炎 / 皮表の黄色ブドウ球菌叢 / IL-18 / super Th1細胞 / Semaphorin3A (Sema3A) / NGF |
Research Abstract |
今年度は、これまでの研究成果をさらに発展させ、将来、ドライスキンに始まる各種癌痒性皮膚疾患に対する戦略的な新規治療法の開発に繋がる基礎的な動物実験に成功するなど、本研究の最終年度を飾る大きな研究成果が得た。即ち、第一に、アトピー性皮膚炎(AD)の病型診断・重症度診断・治療判定に有用な新規バイオマーカーの開発研究においては、既に昨年度の実績報告で一部紹介したように、皮表黄色ブ菌叢と角層中のIL-18値の果たす役割を明らかにし(Br J Dermatol.2011 Mar;164(3):560-567)、この研究成果は2011年度World congress of Dermatology 2011 E-Poster Gold prizeを受賞した。この研究成果に基づいて乳児に対する早期のスキンケア介入がADの発症予防に繋がることを学会で発表し、また血清中のIL-18値もADのバイオマーカーとして有用であることを明らかにした(Arch Dermatol Res 2011)。第二に、私達は早くからADの痒みの病態において神経成長因子(NGF)やsemaphorin 3A(Sema3A)が果たす役割を明らかにし、ADのマウスモデルにおいて癌痒性の皮膚病変にSema3Aを局所投与することで掻破行動を有意に抑えることを報告したが、今年度は、実験的に作製したマウスアレルギー性鼻炎の鼻腔内にSema3Aを点鼻投与することで、鼻引掻き行動や鼻分泌中の好酸球数を減じ、組織学的にも鼻粘膜の肥厚や粘膜上皮内の神経線維の数を減らし(J Phamacol Sci.2011;117(1):34-44)、痒みの強い乾癬病変においてもNGFとSema3AがADと同じ様に痒みの病態に関与していること明らかにした(Acta Derm Venereol,2012)。第三に、これまでの痒みを誘発するドライスキンの治療は保湿のスキンケアと抗炎症のステロイドや免疫抑制薬の外用が基本であったが、コラーゲン由来のトリペプチド(CTP)が真皮内の繊維芽細胞に働いてヒアルロン酸(HA)の産生を促すことから、実験的ドライスキンに対して大量のCTPを経口投与することことで、皮膚のHA含量を高めて亢進したTEWLを抑え、皮膚のNGFの低下とSema3Aの増加を伴って掻破行動が有意に抑えられることを明らかにした(J Dermatl Sci.2012 May;66(2):136-43)。新しい視点に基づいた痒みのあるドライスキンに対する新規治療法であり、今後の臨床応用が期待される。
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