2009 Fiscal Year Annual Research Report
非ステロイド性抗炎症薬の神経保護と神経毒性に関する脳代謝画像研究
Project/Area Number |
21591482
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
村田 哲人 University of Fukui, 医学部, 准教授 (80200294)
|
Keywords | 脳スライス / グルコース代謝 / NSAIDs / ポジトロン / ミトコンドリア機能 / 神経保護 / 神経毒性 / アラキドン酸 |
Research Abstract |
本研究では、様々な非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による脳代謝への影響を経時的に調べるため、dynamic positron autoradiography technique(dPAT)を用いてラット新鮮脳切片に対しグルコース代謝のトレーサーである[^<18>F]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose([^<18>F]FDG)の取り込み実験を行い、NSAIDs(非選択的NSAIDsとしてサリチル酸とインドメタシン、選択的COX-2阻害薬としてセレコキシブとロフェコキシブ)のグルコース代謝に及ぼす影響を評価した。また、NSAIDs投与による局所脳グルコース代謝変化の速効性および持続性などの継時的な特徴についても検討した。サリチル酸とインドメタシンでは、脳局所グルコース代謝は調べた全ての脳部位で濃度依存的(100μM~1mMまでの範囲で)に亢進し、セレコキシブでは全ての脳部位でそれよりもはるかに低い濃度域(3~100μMまでの範囲で)で脳局所グルコース代謝は亢進した。これらNSAIDsによる脳局所グルコース代謝の増加は、細胞内カルシウムのキレート剤であるBAPTA-AMによりほぼ完全に抑制された。以上より、本研究で示された複数のNSAIDsによる脳内グルコース代謝の増加には、COX選択性に依存しない細胞内カルシウム上昇の関与が示唆され、NSAIDsによる細胞保護および細胞毒性や副作用さらには薬理学的作用機序に関連している可能性が示唆された。今後さらに、ミトコンドリア機能やATP産生能の評価を加えてNSAIDsの作用機序や神経保護・毒性のメカニズムを掘り下げ、副作用の少ないより優れた新規NSAIDs開発の糸口を探ることは、医療や社会への貢献度は高く、その意義は極めて大きいと考えられる。
|