2011 Fiscal Year Annual Research Report
非ステロイド性抗炎症薬の神経保護と神経毒性に関する脳代謝画像研究
Project/Area Number |
21591482
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
村田 哲人 福井大学, 医学部, 准教授 (80200294)
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Keywords | 脳スライス / NSAIDs / グルコース代謝 / ミトコンドリア機能 / ポジトロン / 神経毒性 / 神経保護 / Reye脳症 |
Research Abstract |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はその一般的な薬理作用(抗炎症・鎮痛・解熱)に加え、近年ではその細胞傷害性の副作用(Reye脳症、消化器系潰瘍など)や神経保護効果(神経変性疾患や気分障害などに対して)によって注目されている。本研究では、各種NSAIDsによる脳内代謝活動(グルコース代謝やミトコンドリア機能)への影響を評価し、NSAIDsの神経毒性のメカニズムを検討した。古典的な非選択的NSAIDs(サリチル酸とインドメタシン)では、調べた全ての脳部位で濃度依存的(100μM~1nMの範囲で)に脳局所グルコース代謝が亢進し、選択的NSAIDs(セレコキシブやロフェコキシブ)では全ての脳部位でそれよりもはるかに低い濃度域(3~100μMの範囲で)で脳局所グルコース代謝が亢進した。これら複数のNSAIDsによる脳局所グルコース代謝の増加は、いずれも細胞内カルシウムのキレート剤であるBAPTA-AMによりほぼ完全に抑制され、COX選択性に依存しない細胞内カルシウム上昇の関与が示唆された。また、非選択的NSAIDsではCMRglcの亢進を認めたのとほぼ同等の濃度で、ミトコンドリア機能が対照群に比べて有意に低下したが、選択的COX-2阻害薬ではミトコンドリア機能の有意な低下が認められなかった。以上より、非選択的NSAIDs特異的に(選択的NSAIDsでは観察されない)、細胞内カルシウム上昇を介したミトコンドリアの好気的糖代謝の障害(代償的な嫌気的糖代謝の亢進を伴う)が起こり、これらの脳内代謝活動の変化が、NSAIDsの神経毒性および細胞傷害性の副作用(Reye脳症など)の発症に関与する可能性が示唆された。今後さらに、NSAIDsの神経毒性・保護のメカニズムを掘り下げ、副作用の少ないより優れた新規NSAIDs開発の糸口を探ることは、医療や社会への有用性が高く、極めて重要と考えられる。
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